灼熱地獄行き

第27話 灼熱地獄行き

 世界の寿命を最も縮めた人物は、ノストラダムスである。

 それはもう、疑いようも無い。

 何せ、『1999年』と明示したのだから。

 一説によると、韻を踏むためにその年にしたとも言われている。

 もしかすると、彼の生きていた年代に、破滅的な危機が迫っていて、それを先延ばしする為に予言したのかも知れない。

 現代を生きる我々にとっては、いい迷惑である。

 一説によると、本当に地震が危険な時期のヨゲンはされているらしい。

 但し、被害範囲迄は明示されていない。

 ただ、巨大な津波を伴う可能性が高いそうだ。

 だが、コレが思い込みから来るものだとしたら、どうだろうか?

 悪い情報を拡散している者は、その罪を償えるのだろうか?

 俺は、背負う。どの道、公開処刑から巨大恒星の中心で概念の焼失まで焼き尽くされるのだから。

 情報は、拾ってきただけに過ぎない。

 悪いことは、見ざる、言わざる、聞かざるが正しい姿勢だそうだ。

 ……俺も、言わざるを通せば良かったのかも知れない。

 だが、今更だ。

 詐欺に引っ掛からないように、予備知識を得ておくことは、予防措置として有望な筈だ。

 この知識も、予防措置を打つために有望な情報となるかも知れない。

 だが、コロナ禍の時も、皆は聞く耳を持たなかった。

 恐らくは無駄になるであろう。

 どうせ、俺の意見は無視される運命にある。

 分かっている。小学生の頃には思い知らされていた。

 その代わり、俺も無視してやる。世界が救われる為に有用な可能性を。

 出来れば、イジメも徹底的な無視と云う形にして欲しかったものだ。

 そもそもが、嫌われ者として俺を作るくらいなら、最初から存在していないようにしておいて欲しかったものだ。

 まぁ、両親からすれば、切望された子供なのだろうけれども。

 自分で気付かなければ意味が無いとは言え、何の説明も無かったと云うのは、理不尽さを感じる。

 恐らくは、昇天出来ず、地獄に堕ちるのだろう。

 確かに、『真っ逆さま』に堕ちたからな。2歳~3歳の頃には既に。

 馬鹿にされ続けていた。3歳の頃からは既に。

 意味も分からず、からかい続けられていた。保育園に通い始めた頃から既に。

 軽度のイジメに、怒り続けていた。意味も理解せずに。

 皆で示し合わせたように、俺をサタンの領域に押し込められていたんだ。

 気付いたのは、近年である。5年も経っていないだろう。

 いっそ、死んだ方がマシだろうと云う位に痛い目に合った。

 ただ、その時の記憶は殆ど消された。手術によって。

 確かに、俺はキ〇〇ト教の敵対者だった。ヨゲンによって、七大魔王と云う犠牲者の筆頭になることによって。

 しかも、トドメは俺自らの手で刺させられた。『ま〇〇う』にほだされて。

 やはり、『怒り狂った』のが悪かったのだろう。自分で自分を呪うなど、正気じゃない。例え、呪いを信じていなかったとしても。

 神様もそうだが、俺をイジメ続けていた奴らは、意地悪にも過ぎる。

 どうせ、こうなることが分かっていてやったんだろう?俺は何となく嫌な予感がずっとしていて、オーバードーズ過剰服薬を繰り返したよ。

 済んだ事だから、俺は今、『生きたい』と願っているが、同時に、『死んだ方が楽になるんだろうなぁ』とも思っている。

 オーバードーズはもうしない。

 でも、世界が終わってくれるのなら、それと共に俺も死ねるのだろうと思うと、ホッとしてしまうのも事実だ。

 2026年。1999年以降、最初の『丙午ひのえうま』だ。

 言うなれば、火を支配する神様の年。

 でも、思うんだ。俺は、俺と俺の弟の相性の『悪さ』故の、俺がサタンであると確定した切っ掛けが『丙午』と云う運命なのかも知れない、と。

 ならば、2026年は縁起の悪い年では無い。むしろ、『2026』と云う数字はラッキー数の筈だ。

 ただ、符号は一致しているんだ。2026年は。

 コレを乗り越える為ならば、俺は天使にすら魂を売り渡そう。

 悪魔は裏切りそうだから、魂は売り渡さない!

 尤も、天使は魂を天国に届けると云う意味では、日本の死神に近いんだよな……。

 まぁ、俺は灼熱地獄インフェルノ行きが確定しているから、天使の世話にはならんがね。