治験の説明会

第5話 治験の説明会

 三日は、あっという間に過ぎた。
 
 サイレンが鳴り、スマホにメールも届いて、全員が一堂に集められた。
 
「さて。今日、治験の最終説明を行いたいと思いますが、どなたか、『式城レポート』をご存知の方はいらっしゃいますか?」

 聞いた事が無い。挙手した者は、一人も居なかった。
 
「それは、人間が超能力を使えないのは、人間に予め、超能力を封じる能力が備わっているからと云う、一見、非常識な理論を綴ったレポートでした。

 しかし、それを裏付ける薬が研究され、それが今回、治験に使う、仮名『MANMADE-ANGEL』と云う薬です。
 
 簡単に言うと、背中に光の翼が生えて、空を飛べると云う薬です。
 
 薬の効果は、理論上、最低でも47分、維持出来ます。コレを、一日一度飲んで、試して欲しいと思っています。
 
 速度は、時速にして50~60キロ、理論上の上限値は70キロまで出せますが、あまり高くまでは飛べません。せいぜい、100メートル位です。
 
 明日に、まず一人10錠、配ります。それを一週間試して、毎日、ごく簡単な検査と、一週間ごとに尿検査と採血を行って、詳しい健康状態のチェックと、あとは翌週分の薬の再配布も行います。
 
 給与の支払いも、週毎、健康状態を検査する際に行います。
 
 薬を飲むことは、毎日、ココで申告して行って下さい。確実に飲んだことを、確認しますので、余程の事情が無い限り、厳守して下さい。
 
 ある程度の人数が、毎日1錠ずつを飲んだことを確認出来ましたら、一日に何錠も飲んで、薬が足りなくなった場合には、その状態における健康診断を行いますので、少数の方でしたら、もしも一日で飲み切ってしまわれても、構いません。
 
 但し、申告はして下さい。
 
 因みに、副作用がほとんど出ない理論値の限界の数が、一日10錠の服用までです。
 
 健康状態に異常があるようでしたら、薬の処方等の対処を行いますが、申告するようにして下さい。コチラの医療班が確認します。
 
 何か、質問はありますか?」
 
 いきなり信じろと言われても、無理な話だった。薬一つで、空を飛べる?嘘だろ!
 
 麻薬か覚醒剤でも飲んで、トリップしたりするんじゃないのか?
 
 真っ先に挙手したのは、女王・滝沢 神菜さんだった。
 
「何でしょう、滝沢さん?」

「それは、空を飛ぶことを行う事で、治験して下さい、と云う事ですか?」

「勿論。10分~30分、出来れば毎日。

 希望者は、土日祝日は休んでも構いませんが、薬の服薬で支払うギャラの下限は、週約5日。土日祝日も治験して下されば、その分、給与は支払います。
 
 目的としては、長期服用による、健康状態への影響等を調べる事になります。
 
 空を飛べることは、ほぼ確実と分かっていますので」
 
「空を飛べる事を、今ココで、確認させて貰っても構いませんか?」

「あなたが?私たちが?

 どちらでも構いませんが、質問を、一通り聞き終えてからで構わないでしょうか?」
 
「分かりました」