第82話 死に損ない
危ない橋を渡った……。
コレが掲載されていると云う事は、俺は死に損なったのだろう。
隼那も恭一も、楓も紗斗里も七刀も皆、この物語世界が中途半端な形で終わりを迎えなかった事を、喜んでいるのかも知れない。
だが、現実世界では大問題だ。
露首相が死を求めている者が、未だ生きていると云う事になるのであろうから。
むしろ、苦しむ余地が広がっただけ、コチラとしては迷惑な話だが。
丁度、映画を見て来たところだ。
『死んではダメ!』
そう示唆するような内容の映画だった。
その癖、映画の中では死人が出る。
恐らく、候補に挙がっていたもう一本の作品を見た方が正解だったのだろう。
だがいい。俺の代わりに、映画の中で死んでくれたのだろうから。
俺はコレでいい。だが、道連れにするか、最悪でも残留思念で始末しようとしたアイツはどうなる?
日本、特に北海道への侵攻は、ソコ迄してでも止めたい。
「ウクライナ侵攻で懲りててくれれば良いんだがな」
国の規模を考えるに、日本だけでは露を完敗させることは出来ないだろう。
――本当にそうか?
日露戦争ではかつて、日本が勝っている。
その歴史を繰り返せば……?
勝ち目が一筋、見えて来たな。
ただ、今回の露には核がある。
米が協力的であってくれれば助かるが、あの米の切り札が『米ファースト』を主張し、日本に協力しなかった場合、――惨劇が起こる。
「『セレスティアル・ヴィジタント』による襲撃も、現実世界では起こらなかった。
でも、『アーンギル』による襲撃は、現実世界では起こる可能性がある」
『アーンギル』と云うキラーチームによる襲撃では無いかも知れない。
だが、『アーンギル』と名乗る軍隊に依る侵攻はあるかも知れない。
ソコを、思いっきりジャミングしたい。
侵攻を躊躇わせ、止めてくれる何かの保障が欲しい。
いっそのこと、今の若い人たちに丸投げしてしまいたいが、ソレも不安が残る。
サタン対サタン。コレが、世界の破滅的大戦にならなくて、どうなると云うのであろうか?
恐らくは、露は既に世界を滅ぼす覚悟が決まっているのだろう。
そして、恐らくは、露首相にとって、露の社会が非常に都合が良いのだ。
だから、その領域を広げて、より豊かになろうとしている。
核を落とす覚悟を決めて、放射能に汚染された土地を手に入れて、本当に豊かになると信じているのだろうか?
恐らく、コレラの情報も、露はチェックしているだろう。
ああ、俺は露首相の殺意を向けられているのか。
世界樹と繋がりのある俺に。
だから、死者が絶えないのだろう。
どうにせよ、もう少々待て。
西暦2025年の7月には、大津波で日本全土が壊滅的状況になる可能性があるのだから。
そうなったら、抵抗らしい抵抗も無しに北海道が手に入るのだから、本望であろう?