武者震い

第88話 武者震い

「アレで本当に良かったのかねぇ……?」

 恭一が、ボソリと呟く。

「コキュートスの運用を任せた事?

 仕方ないわよ。他に名案も無かったし」

 隼那はそう答える。

「少なくとも、『コキュートス』は濁っていないわ」

「濁っていなければ良い、なんて問題じゃないと思うけどな!」

 そう言いながらも、恭一は苗字は別として、名前は濁らぬものに変更した。

 一抹の不安は残るものの、蛆虫であり、氏神様である名前を避けたのには、意味があると思いたい。

 まぁ、『緋神』の名字は残しているから、どげんかものかとは思うけれども。

 神様にでもなりたいのだろうか?それが例え、疫病神であろうとも。

 一触即発の状態ではあるのだ。ただ、その危機から脱したい。ただそれだけだ。

 ふざけたのではない。単に、検証がしたかったのだ。

 そして、『三度の実現性』には及ばぬものの、それなりに、実証は出来たのだ。

 偶然にしては、出来過ぎている。ソレは間違いない。

 だが、どうしても『三度の実現性』は実証させてくれないのだ。

 露は蘇に濁る事を嫌っているのかも知れない。

 だったら、全く新しい名前を考案すれば良い。

 少なくとも、ロシアンルーレットと云う概念が残っている限り、露の国名は避けた方が良い。

 結局は、人類皆、狂っているのだよ。

 少なくとも、日本は今の憲法に従う限りは、侵略に対して抵抗する事しか出来ない。

 だが、敵を全滅させるレベルで抵抗する!

 『能ある鷹は爪を隠す』と云うが、俺に『能』なぞ無い。

 結局は、自衛隊頼りだ。

 けれど、宇は参考になる戦い方を示してくれた。

 タダでは死なない。

 だが、もしも俺と同じ誕生日の『アサ』こそが、疫病神なら。

 俺かアイツが死ねば、露に惨劇が訪れる。

 なぁ。一応チェックしているんだろう、露のスパイよ。

 ならば、教えてやってくれ。日本はカウンターを狙っていると。

 カウンターを防ぐ最大の方法は、『攻撃しない事』だと。

 クロスカウンターを狙っている?

 なぁ。日本に侵攻する事だけは、止めておけよ。

 ソレは、惨劇の始まりでしか無いんだぜ?お互いにとって。

 宇に攻め込んで、判っただろう?

 窮鼠猫を噛むと云う。相手が小国だと侮っていると……。判るよな?なぁ?

 選挙でも不正を行ったようだが、最期が悲惨になるだけだぜ?

 それとも、ロシアンルーレットで弾丸が発射されることが確定の上で、自らの頭に拳銃を撃ち込めるか?

 お前の行いは、『正義』じゃない。『無謀』だ。

 『天下布武』とでも唱えるかよ!(笑)(笑)

 正に、自滅する運命か宿命を帯びた行いじゃないか!(笑)(笑)

 信頼出来る臣下しんか?恐怖政治を敷いている以上、裏切者はいつ現れてもおかしくない。

 恐らく!露首相。貴様は、最も信頼出来る臣下に裏切られて死ぬであろうよ!

 もしくは、最悪、自らの娘の手でな!

 な?そんな終わりは迎えたくないだろう?

 ならば、独裁政権を持つ国家の成り立ちを改めろよ。

 恐らく、トップに立っていないと不安なんだろう?

 教えてやるよ。その震えを、『武者震むしゃぶるい』と言うんだ!