第63話 機械の好き嫌い
幾つかのパターンの、『ダーク・ライオン』が完成した。
結局、極限までの極端化を行なったものは、使い物にならなかった。
幾つかの数値を下げて、出力の100%、つまり『レベル9相当』の出力を出せるようにし、多少の余裕――所謂『遊び』と云う要素を取り入れた。
それによって、一部の機能の出力が、レベル10超過、つまりはレベル20とか30とか云う性能を出せるようにした。
この際、上限値をレベル30と定めた。
それ以上の出力がある場合、他の数値の限界を押し上げるような仕様にした。
作ろうと思えば、無数のパターンの『ダーク・ライオン』が作れた筈だ。
それを、疾刀は7パターンに絞った。
ただ、――ただ、だ。
出力は、電源が単三電池二本限り。
その限界を超える性能を与えるには、電源を増やすか、他のエネルギーを利用するしかない。
その為に、疾刀は一見無意味な改造をした。
疾刀曰く、『愛のエネルギー機関』である。
――即ち、『愛=i(虚数)』を四等分し、二つずつを掛け合わせ、更に出来た二つを掛け合わせる。
これによって、『+』のエネルギーが摘出出来た。
使い手によって、性能差がある。ソレはどうにもしようが無かった。
そして、面白い事に、複数名で使用しても性能差があり、大抵は出力が上がるが、場合によっては出力の下がるパターンもあった。
使い手同士の間で、『愛のエネルギーの高い組み合わせ』によると、出力が上がり、『愛の無い間柄の組み合わせ』によると、出力が下がった。
そう、出力が下がる可能性があるのが、大問題だった。
ただ、嫌い合っている人物同士が使うと、出力が下がるので、判別は容易だった。
そして、「もしかしたら、機械が嫌いな人が使うと出力が上がらないのか」と云う仮説を立て、その立証を試みている。
――ほぼ、その立証も成り立っている。
問題は、『機械を』嫌いな者か、『機械側から』嫌われている者か、どちらなのかを立証するのは、かなりの困難だった。
その仮説を立証するのに活躍したのが、『AI』である紗斗里や総司郎である。
二人が使った場合、間違いなく出力は高かった。
この場合、機械側から嫌われている人や、それでも尚且つ機械を好いている人、双方共に嫌っている者等、様々なパターンを試した。
結果、判明したのが、『ダーク・ライオン』にも微弱な知能があると云う事実だった。
『ダーク・ライオン』に限らない。全てのコンピューターには、多少の差はあれ、知能がある。
これまでも、機械の好き嫌いで性能差が現れていた可能性が生じた。
同時に、機械からの好き嫌いによってもだ。
この事実を知った者は、機械を好きになるよう努力をし、尚且つ機械から嫌われず、逆に好かれる事を努力するようになった。
僅かな差かも知れないが、事によっては重大な問題である。
何せ、コンピューターはバグやウィルスの一つでもあれば、正常に機能しないのだから――