第83話 月詠命の龍神
俺が!命を賭して迄、避けたかった戦争!
何故、露は交渉で物事を進めない!
力づくで蹂躙し、奪うだけ奪う!
こんな野蛮な人間なぞ、この地球には要らない!
ああ、露は『神』を名乗るかよ!若しくは『天使』か?
世界を滅ぼす使命を帯びている?
そんな使命なぞ、捨ててしまえ!
世界を統一したい?
そんな巨大国家が、まともに機能する訳が無い!
人が平等である為の『社会主義』?
現に、トップとボトムで差が生じているだろうが!
ああ、社会の底辺に住む者たちを増やして、搾取するのか?
馬鹿も休み休み言え!
努力した者と努力しない者が対等に扱われる?
努力は報われる仕組みを作らねば、努力する者が居なくなるだろうが!
ああ、だから、『資本主義』だけ取り入れたのか?
底辺で、社会を支える者たちを優遇せずに、資本を生かした者だけ優遇するのか?
ああ、今、理解した!
『資本主義』とは、一種の宗教であり、宗教であるからこそ、狂気の断片が潜んでいる!
今、日本は『社会を支える仕事』をしている者が不足していて、困っている。
だが、だからこそ『自動化』が進むんだ!
『地球さん』の声を聴け!
俺は『生きたい』と言ったが為に、『死んではならぬ』とのメッセージを受け取った!
まさか、『リアルウォーゲームがしたい』とでも言うかよ?
『地球さん』も、遂に自殺願望か?
ならば、仕方があるまい。
俺は『月詠命』たる『龍神』の権限で、日本に依る侵略戦争の許可を下す!
露を戦場としなければ、日本は勝てない!
だから、日本、特に北海道を狙うのは止めておけと忠告したのに。
「許可が下りたわ!
日本の全クルセイダーを以て、露を侵略するわよ!」
そう部下に指示を出す隼那。
彼女に俺は言いたい。
モスクワを火の海に沈めろ!
ああ、命令にしなければ従わぬか。
ならば、面倒だが命令文を作成しよう。
『ExcessiveAdministratorCommand,SubmergeMoscowInASeaOfFire!!』
「それは恭一の役目ね。
私たちは、モスクワを血の海に沈めるわ!」
常世では今頃、『火祭』に『血祭』の真っ最中であろう。
出来れば、善行を積みたかった!
だが、仮説の実証の為に行った行為の一部が、露首相にとっては気にくわなかったらしい。
だから、露が戦争を始めた。
『不快』程度の理由で戦争を始めるから、こうなる。
民主主義国は、これ以上は戦争が起きないで欲しかった!
その願望が届かなかったから、米でも切り札が大統領になるのだろう。
そして、世界中が火の海・血の海に……。
ああ、こうなるならば、仮説の実証なぞするのでは無かったよ!
畜生、五月蝿い負け犬は、俺の方かよ!
何でこうなった?ああ、あの犬にあの名を与えたからかよ!
勝ち馬に乗ろうとしたら、やはり縁起が悪かったかよ!
だが!
未だ、日本・北海道侵攻は始まっていない。
ギリギリまで、俺は諦めない!例え諦めたとしても、ソコからの勝ち筋を見つけ出す!
そう!俺は諦めた時が、最もツイているんだ!
不可能になるまでは、歩みを止めない!
必ずや、日本・北海道侵攻を止めて見せる!
ああ、父さん。残留思念になって、露首相を殺してくれ!
それとも、そろそろお呼びかい?母さんと共に逝くよ?
だからせめて、苦しまないようにだけ、よろしく頼むよ……。