第66話 暗黙の了解事項
一方で隼那&恭次たち『クルセイダー』は、『ダーク・ライオン』を買い占めるべく動いていた。
この際、『一人一台』と云う販売制限が厳しかったものの、『クルセイダー』は人海戦術を利用して買い求めた。
「意外と電池切れが早いわね」
隼那は、すぐにその欠点を見抜き、『クルセイダー』内でその情報を共有していた。
一方で、超能力への対策は厳しく、『対サイコワイヤー・コーティング』が施されており、テレポート等で奪う事を防がれていた。
まぁ、現代では『対サイコワイヤー・コーティング』を施されているのが日本では当然であり、そう云う意味では、最も普及した超能力対策なのだが。
因みに、サイコキネシスに於いては面白い試みを行った者がおり、サイコキネシスでは重量に関係なく移動させられることから、地球を対象に使った者が居る。
結果は、『使い手が相対的に浮く』と云うものであり、サイコキネシスでの空中移動は可能ではあるが、『ダーク・キャット』が設置されている場所に近付いた場合、以下のようになる。
まず、サイコキネシスに使ったサイコワイヤーが『ダーク・キャット』で無効化される。
浮いていた者は、当然、落ちる。
この時、冷静であれば、サイコワイヤーを一度引っ込めてから地面に対してサイコキネシスを使い、落下速度を減速する事で、ダメージを受ける事は無くなる。
だが、焦った者は大怪我か最悪、死に至り、その為、そのようなサイコキネシスの使い方は非推奨となっている。
コレが、安全性を確保されている環境で行えるのならば、身体障がい者も不自由なく移動できるのだが、治安の問題でソレは叶わなかった。
因みに、治安が良ければ『ダーク・キャット』は必要ないのでは?と思う者も居るだろうが、そんな国はキラーチームに狙われやすい。
ただ、アフリカの一部の国では、『ダーク・キャット』が殆ど普及しておらず、サイコキネシスによる移動が、一部の金持ちの間で好まれていた。
尤も、移動時間の効率で言えば、テレポーテーションには敵わないのだが。
何でも、『空を飛んでいる感覚がたまらない』とのことだ。
その為、わざわざ観光旅行と称して飛行体験をする為の観光客が、無視できない数になる。
ソレは、ビジネスチャンスに繋がり、大抵の場合、ある程度儲けた後に『キラーチーム』に潰される。
正に経済的な『殺人』行為である。
因みに『クルセイダー』はこのような行為を忌避しており、実行犯を潰す為の抗争に繋がったりする。
『クルセイダー』は、他の『キラーチーム』を潰すことで利益を得ており、その為、一部の人々の支持を得るのだ。
但し、その逆に、他の『キラーチーム』からは蛇蝎の如く嫌われている。
『クルセイダー』は、裏社会の天下統一を狙うのだから、ある意味当たり前である。
今現在、表社会の『一ヵ国に依る天下統一』は現実的では無い。
だが、裏社会は『クルセイダー』に依る天下統一はようやく見えて来始めた。
表社会は、『民主主義』と『社会主義』の二つの主義の対立に、解決策が見えない。
仮に軍事力でそれを為そうとすれば、最終的に見えて来るのは『核による世界の破滅』なのだから、止めた方が良い。
裏社会では、『核』と云う選択肢は取れないし、取らない。暗黙の了解事項だ。
ソレに代わるのが、サイコプラグシステムと云う訳だ。
だが、『クルセイダー』は裏社会の統一を急がない。
何故ならば、表立って対立する事が非常に危険だからだ。
結果が『核戦争』では意味が無い。
ソレを避ける為に、全力を尽くしているのだった。