第44話 日本流の呪術
昼姫は思い悩んでいた。
自分が良い事をしようと思っても、全て裏目に出てしまうのではないかと。
その話を、昼姫は卯月さんに打ち明けた。
「ハッハッハッ。全て裏目にだなんて。そんな訳が無い。
だけど、世界中に夢を届けるだなんて、そんな大手柄を立てようと思ったから、裏目に出たんじゃないかな?
もっと、小さなことから地味に積み上げて行くのが良いんじゃないかな?」
「……そう、ですね」
昼姫は未だ、自身の『魔王』と云う情報を、卯月に言い出せずに居た。
裏切られるのが怖いのでしょうね、きっと。
「そう云えば、僕は一度、夢に見たよ。
昼姫さんが、『サタン』で『ルシファー』であると云う夢を」
「──!それは……」
「馬鹿らしい夢だった。
昼姫さんは、穏やかだし控えめだし、『憤怒』と『傲慢』を司る魔王だなんて、荒唐無稽にも程がある!」
「……ありがとうございます」
ポロリと、昼姫の瞳から涙が零れた。
「もっとも、僕は『アスモデウス』らしいけどね」
「えっ!?あっ!ソレは──」
昼姫は、あの事実を言い出そうとしているようだ。
「──『七つの大罪』への覚醒初期には、誰もが『アスモデウス』に陥る運命だと聞いた事があります」
「……だとしたら、僕も『アスモデウス』では無いのかな?」
「恐らく」
卯月さんが陥りそうな大罪って、何かしらね?
「僕の予想では、『ルシファー』だね。
ホラ、ヒロイン的な彼女を得ようとしている」
「ひ、ヒロインだなんて……」
昼姫!自覚を持ちなさい!この物語のヒロインは貴女なのよ!
「で、でも、『サタン』と『ルシファー』には同一人物説があって──」
「うん。僕は、兄の魂を宿しているからね」
「──えっ?!」
訊いてみると、事情はアタシ達と同じみたい。
「僕の亡き兄は、『藤雄』と云ってね。4月1日生まれだったんだ。そして、その命日は4月7日。因みに僕の誕生日は4月4日。
『エイプリルフール』に『藤』だと、『不死』の支配は難しいらしい」
やっぱり、卯月さんは『覚醒者』だった!
そんな運命に翻弄されながらも、アタシ達は、必死で、必死で、平和の維持をしようと努力している!
お願い!誰も、アタシ達が鎮めている『怒り』を呼び起こさないで!
でもきっと、アイツがアタシ達の『怒り』を目覚めさせる!
だけどきっと、アタシ達が受けて来た『イジメ』の方が苦しかった!
だから、アタシ達の方が運命的に『強い』と信じている!
──そうか、社会主義国の多くが文化的に未熟なのは、こう云う犠牲者を出さない為なのね。
でも!──神様は、優れた文化の方を楽しみにしていると信じている!
誰一人、犠牲を出さない社会なんて、多分不可能なのよ!
それでも、犠牲者が少ない社会を?
その社会に不満を持っている人が大勢居るのを、無視する事の方がよっぽど大問題だわ!
恐らくは、切っ掛けは『天安門事件』。
社会主義国が、社会の維持の為には、若者の不満も軍事力を以て強制的に鎮圧すると云う暴挙に出た事件。
だけど、良いのかしら?そろそろ、その頃の若者が社会に台頭して来る頃合いだと思うのだけれど。
ああ、そうね。その為の『独裁者』なのね。
危険分子は、独断で仮初の大義名分を謳って処刑する。
でも、引退せざるを得ない年齢になったら、どうするのかしら?
まぁ、そんな事に興味は無いわ。
問題は、『BRICS』に朝が加わって、日米韓に戦争と云う喧嘩を売って来る事態になりかねない事よね。
馬鹿らしい。更に強力になった新型コロナに掛かって死ぬ可能性を考えずに『戦争』と云う手段を取るだなんて。
下手したら、首脳陣が全滅よ?
因果律ってものを思い知る事ね!
塩は……露語で、『ソーリ』ね。
それだけ判れば十分だわ。
二度と、呪術を試させない事を願いたいわ。
中語では予想が付いているし、朝語は──調べて欲しいのかしら?
日本、正確には北海道方向へと何度もミサイルを発射しているみたいだけれども。
何度試行錯誤を繰り返そうとも、本番の一発の失敗は、成功を積み重ね過ぎているからこそ難しい事を知ると良いわ!
でも、私たちは、失敗を繰り返し続けているから、成功を収める事が難しいのよね……。
だからこそ!肝心な時の『一手』は、成功すると信じている!
全ての核ミサイルよ、発射される時には、暴発なさい!
イザと云う時には、コレを英語で命令して下すわ!
命令が嫌いなのは知っている。だから、矛盾する命令のどちらを選ぶのかは、地球の意志に任せるわ!
それとも、まだイジメて、『惨劇』が希望なの?
そうね。死んだ方がマシと思いながら活動している事実は、否めないわ!
……よく考えたら、『ベルゼブブ』も、当然ながら、『むし』なのね。
よく出来ているわね、ホント、この世の中は。
未だ気付いていない事が沢山あると考えるだけで、憂鬱になって来るわ!