斎藤に塩

第34話 斎藤に塩

「しっかし、始末しても始末しても、キリが無いぜ?

 一体、どれだけの数がばら撒かれたのよ、『穢れ』って奴は?」

「何であれ、一件一件始末して行くしか無いわ。

 時間軸をさかのぼって広められているのが、イチイチ厄介ね。

 でも、特徴は捉えた!奴らは、小高い丘の上や目立つ場所で勝ち鬨を上げて、『穢れ』をばら撒いている!」

 オリジナルの隼那と恭次が始末した『穢れ』の数は、数十。百にも届かない。

 何故ならば、イチイチ過去に時間軸を遡って、『穢れ』をばら撒く者を追尾して始末しなければ、ソイツラが何処に行ったのかが判らないからだ。

「ねぇ、『穢れ』を広める者の正体って、何だか見当はつく?」

「さあ?隼那は見当がつくのか?」

「恐らく――

 魔王の使徒。魔王崇拝者たちよ。

 可哀想に。『サタン』の使徒になったら、呪われるのよ?」

「そりゃまた、何で?」

「消す事の出来なくなった黒歴史。

 でも、警告はしたわ。

 後は、彼らが自らの頭の『悪さ』に気付くかどうかの問題だけ。

 ――もう止めましょう。新たな『呪い』が発動したら、洒落にならないわ」

「……そうだな。

 自滅覚悟なら、誰でもそれなりの努力をすれば出来てしまう事だしな。

 さあ、半分は過ぎたぞ!

 あと3日か4日で、始末出来りゃあ上出来だ!」

進捗状況しんちょくじょうきょうが5割に達しているとは思えないけどね。

 ――いえ、ココは『想い』がそのまま成就される世界。

 半分は始末し終えていることを信じましょう」

「俺には難しい事は判らねぇ。

 ただ、指示通りキッチリ働くのが、俺のお仕事よ!」

「ゆっくりやりましょう。

 『いては事を仕損じる』とも言うわ」

「急いじゃダメなのかよ?!」

「ダメとは言わないわ。けど――」

 隼那は、ソコで言葉を溜めた。

「『けど』、何だと云うんだ?」

「――いえ。

 マイペースで進めましょう。

 急いでダメ、のんびりともしていられないなら、マイペースで進めるしか無いわ」

「なあ、隼那。俺たちのマイペースと言や、アレだろ?」

「ええ。『即断即決即実行即勝利』よ!」

「ならば、判断を急いでくれや。

 もたもたしていらんねぇぞ?」

「待って。もう少しで答えが出そうなの。

 ――斎藤にダイヤモンドを贈った。塩じゃなかった。

 うん。その事実を消さなければ、斎藤に屈する事になりかねないわね」

「だが、ソレも後回しだろう?

 今は『穢れ』をはらわねば!」

「そう。そうなんだけど……時間軸を自由に行き来出来る今のこの世界は、好都合なのよ。

 でも、そうね。『穢れ』を祓い終えてから出良いわ。

 『質』にでも入れていてくれれば好都合なんだけれども」

「ハハハ、ならば、数百円にしかなっていないだろうよ!

 つーか、ソイツ、5月生まれじゃね?

 あの阿呆が断られていてくれて、好都合だわ!」

「――そうね。

 『Now』の一言が添えられていなければと思うと、ゾッとするわ」

「行こうぜ。

 『穢れ』は今も、広まり続けているのかも知れないんだからよ!」

 二人はその日、ようやく始末した『穢れ』の数が、『100』に達するのだった。