手数料

第25話 手数料

 『老師・岡本道場』は、毎週日曜日に開催されるらしく、参加は強制ではないが、その集いの最後に出前で寿司を食べて解散と相成った。

 昼姫は美鶴さんと一緒に帰る事になった。

 地下鉄の最寄り駅が同じと云う程度には近い土地に美鶴は住んでいるらしかった。

「じゃあ、気が向いたら、また来週」

「はい!多分、来週もお世話になると思います!」

 軽くお酒も入って、良い気分で昼姫は帰宅した。

「ただいまー」

 帰宅して挨拶はすれど、返事を返す者など誰も住んではいない。

「おかえりー」

 だから、昼姫は自分で返事をするのだった。

「はぁ……」

 気を張って、疲れていたのだろう。昼姫は歯を磨いて化粧を落とすと、ベッドにダイブした。

「幸せな時間だったー……」

 昼姫自身、一つのゲームにココまで入れ込む事になろうとは、想像だにしていなかったのだろう、自身のヲタク適性に気付き、ぼんやりとしていた。

 そして、観察していて気付いたことが、一つあった事を思い出した。

「……試してみようかな?」

 ほろ酔い程度の酔いであったが故に、既に酔いは醒めかけている。

 昼姫は、うつ伏せでタブレット端末を起動させた。

「えーっと……希望するのは、『輸送船型惑星』。

 で、試してみないと!」

 『輸送船』は、常に不足気味で進むのが、このゲームの特徴だと気付いた。

 そして、優遇されていない星の者たちは、トレードそのものが行われない事で、勝ちを拾えないでいる。

 ならば。

「──多分、13%迄はイケる筈!」

 手数料の話である。

 そもそもトレード出来ていない星への救済措置として、手数料13%で交易を促すのだ。

「……おっ!良い感じ……」

 こうなるともう、得たい商材と交易の規模まで選択する余裕が出て来る。

「うーん……海水を得て、水と塩とを分離して得たいのだけれど、意外と人気の商品なのね、海水って。

 私が取り扱える分野では無さそう……」

 そして、ゲームを進めていく中で、『Venues』と『Fujiko』さんの存在を発見する。

「うーん……相変わらず『Fujiko』さん、気持ち程度だけど私に優遇してくれている気がする……。

 何者なんだろうなぁー、『Fujiko』さんって」

 判らないとなると、益々気になる昼姫であったが、少なくとも昼姫は、『Fujiko』さんが女性だと思っていた。

 間もなく訪れる、国別代表選考会に於いては、決勝に勝ち残った5名が一堂に会する機会であるし、昼姫と『Fujiko』さんが勝ち上がれば、会えるチャンスは無いでもなかった。

「──良し!腕を磨こう!」

 だが、昼姫は『老師・岡本道場』を一回経験した事で、十分な経験知が溜まり、最早、一桁順位を当たり前に出せる腕前まで上がっている事は──気付かずに居る内が花かな。

 等と、昼姫の内側で、アタシこと朝姫はそう思うのだった。

 因みに、今回のひと試合は、『Venues』と『Fujiko』に次いで3位と云う、立派な成績を挙げて、昼姫は大喜びするのであった。

 ──チッ!『Primula』と『Kichiku』、『Victory』辺りも参加していれば、こんな調子に乗せないのに。

 と、思っていたことは、アタシだけの秘密である。