戦況

第20話 戦況

 十二時を過ぎた段階で、戦況はそれでも五分と五分だった。
 
 先に出発した男たちの中には、随分と死者が出ている。
 
 敵の方が死者は多いのだろうが、それでも二百足らずのクルセイダーに対して、少なくとも五百以上の人数が居るのだから、戦力の数では三倍以上の開きがあると考えねばなるまい。
 
 それほどの差がある。ちょっとやそっとでは追い付けない。
 
 楓の提案した『ネットを組む』という方法は、実に効果的だった。
 
 力をフルに発揮出来る状態にあったチームは、いずれも負けていない。
 
 ネットを組むというのは、要するにテレパシーの応用で、一人では発揮出来ない力を皆で力を合わせて発揮させるというものだった。
 
 この方法だと、ネットを組んでいる誰かが使っているソフトを、その全員が力を合わせて使った場合に発揮出来るだけの力が全体として使えることになるので、今回の場合はおよそ百五十人分の力が発揮出来ることとなる。
 
 そんなものを使いこなす相手に、一人や二人で対抗することなど出来る筈が無かった。
 
 ただ、弱点があるのと周囲への被害を考慮しているのとが原因で、圧勝していると言う程にはなっていない。
 
 だがそれでも、十分に戦果を挙げている事は確かだ。
 
 隼那は幾つものバツ印が付けられた真新しい地図とにらめっこをしながら、戦況と被害とを考えて、複雑な表情をしていた。
 
「――ドラゴン部隊は、退却させた方が良さそうね。被害が大き過ぎるわ。

 屋内戦も考えた方が良いかしら。ダークキャットを使われていたらオシマイだけど、外を巡回している連中は、そろそろ少なくなってきたから」
 
 隼那はそう云いながら、地図に次々とバツ印を書き込んでいく。既に書き込んであった丸印とは、大体が対になっている。
 
「疾刀の場所は、分からない?」

 先程から楓には、それが気になって仕方が無かった。
 
 迂闊うかつに建物に入って行く訳にはいかないところが、もどかしかった。
 
「疾刀?――ああ、アイツね。

 候補は幾つか挙げられるけど、今はこれ以上は無理ね。
 
 ――連中、思ったよりも強いわ」