第65話 弱点
ある日突然、その情報が多く齎された。
「『ダーク・ライオン』が税関に引っ掛かった?
あの商品は、未だ輸出を許可していません、全て没収して下さい」
電話で届いたその報せに、篠山室長は適切に判断を下した。
『全て没収』と云う判断も思い切ったものだが、少なくとも篠山室長は、国外に輸出するつもりは未だ無かった。
日本国中にそれなりに十分に行き渡ってから。その後の輸出と云う判断だと思っていた。
「はぁ?!応じずに『ダーク・ライオン』を起動されて困っている?!
――少々お待ち願います」
篠山室長は、紗斗里と総司郎の方を向いた。
「ちょっと、急ぎで『ダーク・ライオン』の無効化に有効な方法を提示して貰える?大至急!」
「……『Cat』でサイコワイヤーを束ねて当て続けたら、簡単に電池切れが起こりますけどね?」
「ありがとう。――って云うか、そんなに簡単に電池切れ起こす商品なの?!」
「まぁ……悪用された場合の対処法位は考えて作りましたから」
「そう、今回はそれが功を奏したようよ。
もしもし――」
篠山室長は、日本の全空港に、その情報を流した。
「ある程度、口止めした方が良かったと思いますけどねぇ……」
「はぁ?!緊急だったもの。仕方が無いわ。
なら、緘口令を敷いて貰うよう、要望を出した方が良さそうね」
そう言って、篠山室長は電話を掛けた。
「はぁー……。そもそも、輸出を禁じているものを、何故、外国人に売るかしら?
コレは、単三電池の売り切れも想定に入れて対処すべきよね」
「単三電池の売り切れ?
流石に、ソコまで考える必要は無いのでは……」
「災害時に、電池がどの位売れるのかを考えれば、一応考えておくべきよ」
「そう……ですか……」
未だ、数千台しか、『ダーク・ライオン』は流通していない筈だ。
ソレに対し、単三電池の流通数を考えた場合――
やはり、単三電池の売り切れを想定するには未だ早過ぎる気がする。
「まぁ、でも――」
単三電池の初期セット分として、確保しておくのは『ダーク・ライオン』の流通に役立つかも知れない。
そうは思ったものの、貧乏人には『ダーク・ライオン』は未だ高く。
対してお金持ちにとっては大した出費では無くて、日本のお金持ちが複数所有する可能性は高く。
紗斗里や総司郎が当初考えていた、『一家に一台、『ダークライオン』』と云う計画は、破綻しつつあったのだった。