第32話 希望を見出す
「ねぇ、恭次。知ってた?」
隼那は恭次に声を掛ける。単調な作業に飽きて、話をすることで行動を継続しているのだった。
「何だよ、隼那」
「ココ、本当の『常世』じゃないのよ?
そうね……『仮初の常世』と云った感じかしら?」
「……!まさか!俺たちの行動、全く意味が無いのかよ⁉」
「観測者が確認されていないからね。
他にもうひと柱でも観測していれば、変化が生じる筈なのだけれどもね」
「観測者が確認されていない……?
だが!一度は確実に影響力を感じた!」
「コレも、地球の意思の断片だものね。そりゃ、強い権限で命令を下せば、多少の影響力はあるわよ。
ただ、悪戯に強過ぎる権限で命令しても意味は無いみたいだけど」
「それでも、一度は通じるだろう?」
「一度なら、多少の効果は見込めるかも知れないわね。
ただ、私欲の為に行えば、警察が動くでしょうよ」
「一体、何の罪で……?」
「大抵は強盗に近い行為をするでしょうよ。
強盗容疑で捕まるのではないかしら?」
「そう云う連中を取り纏める為の『クルセイダー』なんだけどな。
『ロー』か『カオス』かは大した問題じゃない。『グッド』であることが重要で、『バッド』であることは許せぬよ」
クスッと、隼那が軽く笑った。何がおかしかったのだろうか?
「ねぇ、恭次。もう一人、子供を育てない?
そして、『善徳』と名付けるの。
出来れば、双子を授かって、もう一人を『命平』と名付けたいなぁ……。
良いアイディアじゃない?」
「もう二人かよぉ……。
経済的に厳しいぜ。
世話もロクに見てやれずに、親父とお袋に預けているのによぉ。
もうちょい、平和で穏やかな時になってからでいいぜ」
「そうね。今は……この件を解決しないとね!」
二人は、この件を片付けた後の時に、希望を見出すのであった。