寄生の条件

第48話 寄生の条件

「腐ってやがる……」

「だって、壊れたんですもの。勿体無いけど、仕方が無いでしょう?

 最初から、皆を使えば良かった」
 
 やや遠くで、三人を囲むように濁りが生じた。
 
 濁りはやがて複数の塊に分かれ、人影へと形を変える。
 
 それぞれ手にはライフルに似た見たことの無いものを構えている。
 
 その人影の中には、医務室にいた筈のフィネットたちの姿も見えた。
 
「……俺が茶番と云った意味が、分からなかったらしいな。

 今から、お前の居る場所に、この銃を撃ち込んでやるよ」
 
『そんな……分かる筈ありませんわ!』

 レズィンは静かに微笑む。
 
 そしてゆっくりと銃を持つ腕を上げ、構えた。
 
 狙いを定めたまま目を瞑ると、覚悟を決めて引き金を引き絞る!
 
 ……銃声が聞こえない。
 
 レズィンの瞼が、ゆっくりと開かれる。
 
 もう一度、引き金を引く。だがレズィンの蟀谷こめかみに当てられた銃は、何の反応も示さない。
 
「やっぱり、そうか。

 ゼノには、寄生出来なかったんだろ?」
 
『……何で、分かりますの?』

 今にも泣きだしそうな、震えた声。周囲を囲っていた人影が消え、シヴァンの姿が光と化す。
 
「世界樹に……植物に寄生した奴が、動物にも寄生出来る条件は何だ?」

『そんな条件があるのなら、あなたにも寄生出来ませんわ!』

「あるだろう。

 忘れたとは言わせねぇぜ。アンタが俺に飲ませたものを!」
 
『あれはラフィアが……』

とぼけるな!」

 酔っているように見えたのも、レズィンは彼女――ラフィアに取り憑いた寄生虫の演技だと、今は思っていた。
 
 思えば、素直に飲み込むことはなかったのだ。
 
 そのお陰で、今は手詰まりになってしまっている。
 
 口調を強めにして話しているのも、今は心理戦で優位に立つしかないと思ったからだ。
 
 今までのも心理戦であった事にまでは、気が付かずに。
 
「おかしな映像を見せたのは失敗だったな。

 お陰で、アンタがそういうことを出来る事が分かった」
 
『違う!あれは……』

『アレは儂じゃ』