第43話 夢と悪夢
一晩経って、夢をただの夢と割り切った者と、参考程度に紹介された技術を確認すると云う事を試した者とに分かれた。
その技術とは、『ミスリル銀』の生成。水の分子構造を正八面体の辺として配置する技術だ。
彼らはソレを、『水のアルフェリオン結晶』と伝えて来た。
原料は、水のみ。但し、『アルフェリオン結晶』を形成する為に、必要な物が幾つかあった。
結果は、成功。千度程度の温度では、融けなかった。但し、数千度となると、融けるらしい。
しかし、『TatS』のプレイヤーには、その情報は公開されなかった。
但し、『世界中で今、このゲームがアツい』との情報が流れ、各国から日本に対し、アカウント制限の撤廃要求が齎された。
しかし、特にサーバーの問題で、その要求に応えるには、時間が掛かると思われた。
だが、居ても立っても居られない国の代表、米国がサーバーの提供と云う形で協力を申し出た。
但し、それでも、他国に与えられるアカウントは、一ヵ国10~20アカウントが限界だった。
それに対して世界が取った方策が、最貧国からのアカウント権利の買収であった。
結果、公式の大会に於いては、日本を含め、全世界に各国10アカウントの参加と云う形が取られた。
日本は慌てて、各国に協力の是非を問う事態に陥った。
そうして協力を取り付けられた国が、6ヵ国であった。
1ヵ国は、『永世中立国』であるが故に、一方的な協力を得られなかったが、『公平な』立場を取ることを約束して貰えた。
それでもやはり、日本にアドバンテージはあったし、協力してくれた6ヵ国も、日本には及ばないがアドバンテージを得られた。
社会主義国は卑怯にも、『一ヵ国に絞った優位性』を取ろうとしたが、実は『TatS』には、ソレを行うと激しい減点が行われるシステムが組まれていた。
よって、日本を含む7ヵ国が上位陣を占め、何故、『一極集中』をした星が勝てないのか、理解できずに居て、運営に文句を言った結果、その減点システムの説明が為された。
飽く迄も、『共存共栄』が『TatS』の目指す目標であったし、日本がトップに立っていると言っても、得点では協力している国々が日本の得点の8~9割程度の得点を得ていた。
培った技術の違いだ。『King』が社会主義国連合の指導者であったが、減点システムについては、久しくその減点を為されなかったが故に、失念していた。
世界から戦争が無くなる……。そんな夢が果たされそうな事態に、特に日本のトップは喜んだ。
何せ、露は元々、日本に侵攻するつもりであるとの情報が流れていたのだ。
それが、そんな事をしたら、露は銀河連合にハブられる事態に陥りかねない状況になったのだ。
勿論、『アルフェリオン結晶』に関しては、露も確認済みである。
コレが、超物理学と云う法則すら与えられない事態に陥ったら、確実に他国に水をあけられる。
例え、水の支配を司る水神の側面を持つ首相でも、ソレは困る。
ただ、露には石油と云う資源がある。ソレをトレードに出して、銀河連合から利益を得られれば、他国と貿易を行う必要は無くなる。
『TatS』に関しても、そう云う手段があると判れば、他の手段を考えるだけの智慧はある。
──と、上手く行けば良かった。
人類が、夢を見れる筈だった。
だが、その切っ掛けが『昼姫』と云う『魔王』であった事から、その夢は『OSの誤作動』と云う悪夢に変わった。
「どうして……」
昼姫はニュースを見てテーブルに突っ伏した。
だが、その夢は『常世』では叶っている筈だった。
問題は、『常世』は誰でも自由に見れると云う性質のものでは無い事だ。
「どうしよう……」
責任?取れる訳が無い。
コレを『不殺』の封印を施した『死神』の封印を解いた『ベルゼブブ』のせいにしてしまう事は簡単だが、意味が無い。
何故なら、彼女にも責任を負い切れない問題だからだ。
自らが『死神候補生』であった事に気付いてもいない者も多かろう。
──こんな化け物を生み出してでも、北海道を露から護りたかったのだ。勿論、他の国からも。日本の他の領土も。
北方四島は、個人的にはもうどうでもいい。返還しないのなら、半永久的に返還しなくても構わない。
だが!北海道となると違う!日本の石油貯蔵タンクもあるのだ。
北海道を奪うと云う事は、日本に『死ね』と言う事に等しい。
国一つの命と、国の首相一人の命を比べれば、どちらを護るべきかは明らかだ。
もしも、侵攻の気配でも見せようものならば、『呪い』を掛けよう。
致死性の『呪い』は、対策が出来る。だから、『超弱体化』の呪いをだ!
発動寸前で止めておこう。
さあ、露の方針や、如何に!?