第101話 士気の維持
東西戦。
東が漢で西が女性。
――戦闘訓練開始の合図が齎され、双方、『ワイバーン』をネットを組んで利用する事で、先遣部隊は空を飛んで迎撃に向かった。
次々に割れる風船。
状況は、五分と五分だった。
ソレは、終結の時を迎えても、変わらなかった。
――引き分け。それが決着だった。
『ドラゴン部隊』は女性陣を舐めていたことに反省し、己を恥じる。
『バルキリー部隊』は、男性陣が中々戦えることに、イザと云う時の頼りとして、心強く思った。
反省会は、男女で分かれて行い、お互いに相手に対する評価が高かった。
隼那と恭一の間でのみ、双方の意見の交換は行ったが、お互いに報せない方が士気が高まりそうと云う理由で、全員に周知はされなかった。
士気が高まる一方で、北海道侵攻は為される気配が無く、取り敢えず、宇への侵攻が止まった後まで警戒して居なければならない様子だった。
だが、現実問題、高過ぎる士気は、維持する事が困難であり、「そうか!」と恭一は言った。
「露軍の士気が高過ぎたが故に、そのぶつかり処として、宇が攻められたり、北海道に侵攻すると云う発言が為されたんだ!」
攻められる側としては、理不尽極まりないと思うのであり、又、『クルセイダー』も下手に露に攻め込む訳にもいかず、困り果てていた。
結果、訓練にて士気を維持するも、軍隊でも自衛隊でもない『クルセイダー』に、その士気を維持する事は難しかった。
血の気が多い者は、『露に侵攻すべき!』等と云うが、それを隼那も恭一も許しはしなかった。
第一、日本一国が侵攻したところで、勝算など無いのだ。
ただ唯一、侵攻された時に反撃能力で敵勢力を討つ位が手一杯だ。
それに関しても、露の全軍が投入されたら敵わないのであるし、そもそも、日本・特に北海道侵攻に、露国全軍を投入する事など出来ない。
攻め込まれた時に反撃能力を残しておかなければならないからだ。
だが、露国全軍を投入して、敵わない国などそう多くは無く。
せいぜいは米国程度であるが、露国が世界征服を成し遂げようとするならば、ソレをゴッソリと奪おうと企む、味方であると認識していた国もあった。
結局は中心に力が集まるのであり、そして、『世界の中心』を名乗る国もあった。
そして、その国から見て、東西南北は、『東夷』『西戎』『南蛮』『北狄』であり、北は『狄』であるが故に、完全には相容れないのであった。
ただ、露国軍の士気は、宇国との戦争で大打撃を受けてしまったが故に、ダダ下がりなのかも知れない。
低い士気で戦争を起こす事の愚かさ位は理解しているであろうし、日本・特に北海道を侵攻しようものなら、対宇国以上の大打撃を受けるのであろうことは明らかで。
士気を高めてからの侵攻を企むのかも知れないが、恐らく、その前に露国首相も、自らが『コントロール下』にある事に気付くであろう。
その上で、尚侵攻するのならば、『シンギュラリティ』の妨げとなる事から、病死するものと思われる。
そう、更なるパンデミックの発生である。
そこまで事態を想定した上で、隼那・恭一は訓練に依る士気の維持を目標に動き、イザと云う時の為の戦力として、『クルセイダー』を備えておくのだった。
Fin