土鉄の情報

第21話 土鉄の情報

 ――技師を一人、紹介して欲しい。
 
 カメットは、目の前のムーン=ノトスからそう頼まれて、困り果てていた。
 
 カメットは、背が高い、上から見下ろしているみたいで生意気だ、等の理由で、土鉄族の中では嫌われ者だった。
 
 故に、紹介出来る知人は無し。
 
 そう正直に告げると、ノトスは困り果てた顔をした。
 
「そうか……。いや、すまなかった。

 ――土鉄族は、普段、どういった所に住んでいるか、聞いても大丈夫だろうか?」
 
「土鉄族の里、というものはあるけどなぁ……」

「それは、教えて貰う分には問題無いのだろうか?」

「まぁ、知っている奴は知っているしな。

 ココから南東に180KM程の場所にある『土鉄族の里』は、有名だと思っていたんだが」
 
「ありがとう。助かる。

 これから向かおうと思うのだが、同行するか?」
 
「いや。俺たちは同行しない方が、技師を雇うんだったら何ぼかマシだ。

 あとは、酒を持っていくと良い。土鉄族の技師は、殆ど例外無く酒好きだ」
 
「ありがとう、助かる。

 特に好まれる銘柄はあったりしないか?」
 
「んー、分からんが、酒精が強いものが好まれるな。

 ただ、純粋に酒精が濃いだけのものは、逆に忌避されるが」
 
「成る程。ありがとう。

 さて。ならば、まずは酒の入手か。
 
 有名どころで云えば、『土鉄の酒屋』で入手するのが無難だろうな。
 
 行ってみるよ、ありがとう」
 
「良いってことよ!

 分かっていると思うが、酒好きであればある程、腕は危ういからな。
 
 嗜む程度に上等な酒を飲む奴の方が、優れた技師だ。
 
 うーん……、今、そこにいるかどうかは分からんが、『オヤッさん』って呼ばれる土鉄は、有名な腕の良い技師だ。俺でも知っている程度には、な」
 
「情報、助かる。

 なら、俺がソレを頼みに行っている間、例の件は任せるが、良いか?」
 
「良かろう。十分に報酬も貰ったしの。

 安心して出掛けてくれ。
 
 ああ、オヤッさんは、『土鉄の火酒』は好まんから、注意してくれ。
 
 『土鉄の火酒』を好む土鉄は、ロクな技師が居ない。半分酔っ払って鍛冶作業をしたりするからな」
 
「重ね重ね、ありがとう。

 では、行ってくる」
 
「はいよー。また何か仕事があったら、紹介してくれや。

 行って来い!」
 
 そう云う訳で、ムーンは『土鉄の酒屋』に向かうのであった。