第8話 国際大会
『Fujiko』こと、藤沢 卯月は、入院で2年半ほど消息の途絶えた『Morning』こと昼姫を心配して、八方手を尽くして探し求めたが、復帰しているのを確認して安堵していた。
だが、探し辿り着いた連絡先に、中々連絡出来ないでいた。
そんな矢先、国際大会の代表選手の選考会の機会が訪れた。
卯月は覚悟を決めて、『Morning』に連絡を取ろうと、メールを一本送った。
一方、昼姫はメールを受け取って、疑問を感じていた。
確かに、良い取引先として『Fujiko』とはトレードしていたが、個人的に親しい訳では無い。
結果、国際大会の代表選手の選考会にだけ出場を決め、後は『Fujiko』を無視した。
勿論、ゲーム内では良い取引相手であり続ける。
だが、それとこれとは話が別だ。
そして、岡本は『もう現役からは引退した』と選考会への出場を見送った。
選考会当日。
昼姫は新しい惑星を引き、『鉱山型惑星』を引いた。
――チャンス!
昼姫は、スタートダッシュの早いその惑星の引きに感謝した。
だが。
スタートが早過ぎて、中々良い条件のトレードが出来ない。
焦った昼姫は、頼みの綱と思って、『Fujiko』とのトレードに活路を見出した。
『Fujiko』の引きは、『バランス型惑星』。何でも出来るが、その分、特化した部分が無い。
そこで『Fujiko』は、様々な食糧の量産に走った。
『Morning』こと昼姫の切り出したトレードは、『Fujiko』こと卯月にとって、中々ありがたい提案だった。
『金銀プラチナ宝石』は、『鉱山型惑星』で無ければ、非常に高い勝利点を持つ。
『Morning』の切り出した、『食糧と金銀宝石のトレード』は、『Morning』側から見たら、勝利点倍率10倍。『Fujiko』側から見ても7倍と、悪くないトレード量であった。
だが、『Morning』側から見れば、トレードで手に入れたのは、所謂『消え物』。食えば失われてしまう代わりに、人口が増える。
人口増加に依る勝利点稼ぎに走っているのであった。
そして、一次予選の終了。何と、『Morning』も『Fujiko』も、然程順位が高くないとは言え、一次予選を通過してしまった。
結果、昼姫はある決断を強いられる。
それは、『Fujiko』への連絡と、共同戦線の確立の相談。
昼姫にとっては、苦肉の策であった。
メールでその旨を伝えると、快く『了解』を得られた。
卯月としても、協力者の存在はありがたく、かつ、『Morning』が頭の切れる奴であると確信を得ている。組んで間違いのない相手だった。
そうして、二人は協力体制を敷きながらも、二次予選へと備えた。
一次予選通過者、300名。二次予選では、30名まで絞られる。
昼姫は、半ばコレは惑星の引きとの勝負だな、等と考えていた。
それには間違いは無いのだが、最終的にモノを言うのは操作テクニックである。
幸い、昼姫は岡本と云う見本を見ているので、高いレベルでテクニックを保有しているのであった。
最終選考では、5名にまで絞られる。
しかも、それでゴールでは無い。国際紛争の代わりに、代替行為として『eスポーツ』で競うのだ。
最終選考を勝ち上がれば、表彰する為に直に会える。
それを楽しみに、『Fujiko』こと藤沢 卯月は鍛錬を積むのであった。