第2話 回収
『Gungnir』を取り返す為に、キラーチーム『クルセイダー』のリーダー、安土 隼那が動く事になった。
隼那は、直接的に九之一の自宅に赴いた。
恭次に似せて、短く逆立てた赤い髪。身体にピッタリとした黒い革の上下。
――不審人物である。
そんな人物が、夜中にチャイムを押して、「娘さん、いらっしゃいますか?」と言えば、どうなるか。
『お帰り下さい!警察を呼びますよ?!』
親御さんのその反応は当然であった。
「いえ、娘さんが私たちの落とし物を拾っている筈なんですけど」
『九之一。そんなもの、拾った?』
『ううん、拾ってないよ!』
『拾っていないそうです。どうぞ、お帰り下さい』
隼那は、手段を変える事を余儀なくされた。
翌日。隼那は九之一を待ち伏せし、声を掛けた。
「もしもし、お嬢ちゃん?」
「――!昨日の人!」
「サイコソフトを返して欲しいだけなの。拾ったでしょう?ソレ、私たちの物なの」
「あんな危ないサイコソフト、返せない!」
「危ない……?
まさか、『Gungnir』を使えてしまったの?!」
それを証明するように、九之一は光の槍を構えた。
だが、隼那は動揺することなく、自身の前方180度に半球状の『AEgis』――光の盾を展開して構えた。
「貫いて、『Gungnir』!」
九之一が構えた光の槍は、九之一の手によって放たれ、そして、『AEgis』によって弾かれた。
「七代目『AEgis』は、前方からの『Gungnir』を完全に防ぐことが出来るの。
そして、私は『Gungnir』も使えるのよ?」
淳奈はそれを証明する為に、『AEgis』の展開を止め、光の槍を構えた。
だが、ソレは放たれる事無く、搔き消えて再び『AEgis』が展開された。
「争いたくは無いわ。でも、勝てない事は判ったでしょう?」
「うるさい、オバサン!」
『AEgis』も、言葉の暴力までは防いでくれない。30代後半にまで歳を取ってしまった隼那には、ダメージが大きい。
「……お、オバサン……」
九之一は、矢鱈滅多らに『Gungnir』を放つ。全て『AEgis』によって防がれるが、九之一は急に目眩がしてフラフラと危うい足取りで、しゃがんで、そして倒れた。
「あらあら。パワー切れかしら?
好都合ね。『Gungnir』を回収させて貰いますよ、っと。
で、スザクで今、回復させてあげますからね、っと」
隼那は、九之一の意識が戻ったことを確認すると、テレポートで居なくなった。
「……あれ?アレ、取られちゃった!――でも……」
九之一は、『Gungnir』の存在無しに、光の槍を生み出した。
「……使える」
ソレの威力までは確かめないまま、九之一は光の槍を消した。
「まぁ、いいか!」
その一大事を、九之一は取り合えずそんな言葉でスルーした。
九之一は、その能力を矢鱈滅多らに使うつもりは無く、隠し玉として持っておく事にした。