唯一望むこと

第56話 唯一望むこと

 さて。この話を、俺は掲載出来るのだろうか?

 皆さん……と云う程の人が見ているとは思わないが、ご覧の方が居たならば、無事に掲載出来たのであろう。

 何しろ、俺は死の覚悟をし、今はその結末を知らぬまま、この話を未来へ持ち越そうとしているのだから。

 例え生きていても、俺が死ぬ可能性の高い日は、未だ幾日もある。その全てを乗り越えないと、俺に天寿を全うして亡くなる可能性は無い。

 俺が死ぬ可能性の高い日の内、最大限に確率が高い日の内の一日が、今年にある。――11月25日だ。

 ソレを乗り越えたら、ちょっと安心な日が続き、2025年7月、恐らくは5日。

 ソレをも乗り越えたら、2026年の内はいつ死んでもおかしくは無いし、その後7年は、要警戒の日が続く。

 もしもソレをも乗り越えたら、天寿のお迎えを待てるかも知れない。『呪い』が解けるであろうからだ。

 同じことを言える人が、この世に他に3人居る。名前は挙げない。

 だが、可能性があると言いながら、俺はその可能性を望んでいない。むしろ、途中の危うい日に死んでおきたいと思っている程だ。

 理由は、『老いによる衰え』を知り、コレ以上の『老いと衰え』を望んでいないからだ。

 劣り(おとり)を設ける等、ハンカクサイにも程があった。今は囮など無い。失う事は、命が終わるのにも等しいものばかりだ。

 それでも、俺には劣る事ばかりだ。

 そもそもが、『♪劣等生で十分だ~』等とカラオケで歌っていたのも悪かったのだろう。

 優れた能力の一つも無い。

 本気で劣等生になってしまった。

 ああ、そうか。アイツラも俺をイジメる為に歌っていたのかよ。

 クソッたれはお互い様だ!

 だが、お前らに金は請求しねぇよ!

 そこまで堕ちてはいない!

 いや、魔王までは堕ちたけどよ!

 でも、『王』と言えるほどの権力も無し。

 ホント、いっそ本当に殺されていた方が、どれだけ楽だったか……。

 ああ、でも、最短で死ぬ可能性のあった日は乗り越えた。

 次は、11月25日か……。

 恐らくは。

 回避するのは可能だけれど、相応に困難かと思われる。

 でも、もう生きる事にも何の希望も持てていないのだがよ……。

 ……ん?

 万が一にだが。

 11月25日は、運命の相手に出会える日の可能性が、微弱に存在している。

 まぁ、俺の方からナンパでもしなけりゃ、切っ掛けなんぞ作れないのだがよ。

 そして、ナンパする気概も無いから、見逃すのだろうがよ。

 ああ、半端な希望が、見えては隠れる。

 否、希望に導かれようとされながらも、希望の欠片も見つけられなかったのが現実なのだが。

 希望が、気泡に立ち消えたのだ。

 美しき世界。そこにはやはり『濁り』は無い。

 縁起は濁っている。だが、その『良し悪し』には濁りは無い。

 『神』に濁りは基本的には無い(濁りのある読みも存在する)が、Godは濁っている。

 そして、DragonにはGもOもDも含まれている。

 ドラゴンから濁りが無くなれば、虎魂になる。

 だからと云って、何が言いたいのかは、俺にも不明だが。

 虎魂も英語になれば、『Tiger Spirit』になり、濁りと半濁音を得る。

 日本の神道に、『世界の終末予言』は無かったと思う。

 だが、そのヨゲンは海外から齎され、2026年をピークに、回避の方向へ向かわせることは、人類が一致団結すれば可能だとは思われる。

 しかし、その可能性を無視して、戦争は既に始められている。

 世界大戦、それも核戦争に至るのも、時間の問題だ。このままでは。

 恐らくは、北海道侵攻がその際の鍵になる。

 何故ならば、北海道侵攻が行われたら、俺が全力でソレに勝利する命令か、それとも世界の全てを道連れにする命令を下すからだ。

 何故、そんな事態に陥るか。

 俺を含め、侵攻して来る側の首相も、サタンであるからだ。

 しかも、彼方あちらは暴走している。

 ソレを止めるのは至難の業だ。

 諫言かんげんする勇気ある者など、彼の国には存在してはいまい。

 もしもいたとしても、秘密裏に処理される筈だ。

 諫言する部下と云うのは、中々得難い有難い存在である事など、彼は無視するであろう。

 傍若無人。暴君の宿命だ。

 今年の11月25日と2025年7月の大地震による津波が、ロシアを襲ってくれることを願う位しか、俺に出来ることは無い。

 しかも、それも俺の命と引き換えである可能性が高い。

 いいだろう。襲い来る死を、俺は歓迎しよう。

 俺と、多分、あと一人。ベルゼブブが死ねば、北海道侵攻の必要性がそもそも無くなる筈だ。

 ベルゼブブの側は、死の覚悟など決めてはいないだろうから、ベルゼブブを殺すために、アイツは侵攻して来るだろう。

 ロシアよ、津波に沈め!億単位の犠牲が出る事を覚悟せよ!

 お前らが売って来た喧嘩だ。俺は命を賭して、その戦争を止める!

 さあ、俺を殺しに来いよ、〇山!どっちかまでは問わねぇよ!

 ベルゼブブの方だったら、俺はお前を道連れにする!

 もう一方は、未だに恨んでいるのなら、殺されてやるよ。

 もう、真っ平だ!こんな輪廻など、二度と繰り返さないでくれ!

 それだけが、唯一、俺が望む事なのかも知れない。