第23話 和解の可能性
露は瓦解する――
一部の楽観主義者からは、そう思われた。
だが、露の首相は影武者が務める事によって、その盤石な体制を崩さずに居た。
噂では、最低でも7人の影武者が居るとか……。
そして、公言した事は別の影武者に替わっても、遂行すると云う謎の信念を貫く所存のようだ。
結果、露は瓦解することなく、その軍事力とその潜在戦力が失われていった。
宇との和解の道を拓くのも、時間の問題。そう思われた。
ソレに懲りて、『小国』と侮って攻め込む事を止めてくれれば良かったのだが、『クルセイダー』から、宇にこう打診した。
即ち、露に対して、『憲法レベルでの、侵略の為の戦争を永久に放棄する』と云う約束をすると云う条項を。
コレに背いた場合、和解の道は無いとまで、バチカン市国本部からの強い圧力が掛かった。
露はソレを――受け入れなかった。
宜しい。では戦争である!と、言ったとか言わなかったとか。
だが、和解の道が無くなった以上、宇V.S.露の戦争は、終結の気配を見せなくなっていた。
一説には、露が既に占領した土地の占有権を求めたことが、条件として宇側が受け入れられなかったからとも言われる。
結果、露の若者が、兵隊になる事を拒み、中で云う『天安門事件』のような事件が、モスクワで発生した。
露はソレを、軍事力で制圧したと言われている。
民衆の求めていることに応えられないと云うのに、社会的に『完成している』と宣言するかの如き行い。
遂に、神が天罰を下した。
即ち、2025年7月5日。『モスクワ大震災』である。
一説によれば、キーパーソンの死去により、惨劇の幕開けになるとまで言われた、切っ掛けの大災害であった。
死者7万人。ロシアが暗殺者を手配して、キーパーソンを暗殺したことが、そんな形で報いがあるのだった。