第4話 勝率
『俺たちの実力で、勝率がこんなに低い筈は無い』
『創世の魔導士』の、卯辰のパーティーリーダー『悟天』がそう言った。
それでも、七割は勝っている。立派な数字だと、卯辰は思う。
そのタイミングで、『オリジナル魔法の創作』と云う権限が全プレイヤーに与えられた。
そこで卯辰は、『悪い』と断り、丸一日の『オリジナル魔法の創作』と云うテーマに沿った魔法の設定を決める時間を要求した。
『別に悪くは無い』
むしろ、かつての能力の再現を悟天は求めたようだった。
そして、卯辰は何パターンかの回復魔法を設定した。
以前のように、『全体完全回復魔法』も作ったが、MP消費が多く、リキャストタイムも12時間と長い。
それでも、ソレが存在していることが、戦況を良くすることは、火を見るよりも明らかだった。
他にも、リキャストタイムも短く、消費MPも少ないと云う回復魔法も作った。
卯辰がその日、設定した魔法は、7個にも及ぶ。
既存の魔法をリキャストタイム及び消費MPを変更するだけで、それで十分役に立つ。
もっと言えば、全く同じ効果の別名の魔法が存在するだけで、その魔法が有益なものなら、十分に役に立つ。
卯辰の求めた魔法は、そうでは無かったけれど、類似した魔法も作った魔法の中に含まれる。
もっとも、類似した魔法を作ると、元々の魔法に性能で劣る、と云う欠点はあったけれど。
『なのに、何故勝率が上がらない!!』
悟天はそう言うが、以前が異常だったのであり、今が当然なのだ。
現に今も、同じボス相手に、二度連続負けることはほぼ無い。七割の勝率があれば、連続で負ける確率は一割も無いのだから。
勝利の女神は三回に一回裏切る。ただそれだけのことだ。
まぁ、裏切りを計算に入れての勝利もあるから、七割勝てているのだけれども。
悟天は、その辺りを理解していない。
相手のある勝負で、勝利の女神が三回に二回微笑んでくれれば、十分ではないか。
故に、卯辰は七割の勝率で良しとするのだった。