勝て!自らに!

第70話 勝て!自らに!

 もう少しで春が来る。

 出来れば、早く春が来て欲しい。

 冬は、『終わり』の一部だ。恐らくは、『終わり』は冬に来るのだ。

 ただ、『恋』と云う意味の春なら、来なくても構わない。

 どうせ、大した収入は得られない。

 伴侶に依存して生きるなぞ、主義では無い。

「だからと云って、そう簡単に死なれるのも困るのよ」

 紗斗里は、そう思っている事だろう。

 世界は、物語が一つ完成する毎に一つずつ滅んでいる。

 と同時に、物語が一つ誕生する毎に、世界は一つずつ生まれている。

 ソレは、加速的に進んでいっており、故に、『一つの区切り』が出来ようとしている。

 それが、西暦2026年の『丙午』だ。

 或いは、西暦2027年の『呪いの終わり』による、『全神様』――『全知全能の神様』の復活である。

 仮死状態で尚、人の願いを叶える為に活動するとは恐れ入る。

 出来れば、露首相の願いは叶えないで貰う事を願いたい。

 一度、日本を娘と共に訪れれば、『壊してはならぬ』と云う事実に気付くような気がするが、ここでネックになって来る事がある。

 『アベる』――日本首相の暗殺事件だ。

 あの事件は、もしも基督教が主流の国で行われ、かつ、加害者が『コカイン』でもやっていた場合、『裁いてはならぬ』となる可能性があった。

 日本は、本来『神道』が主流の国だし、どちらかと云うと仏教の方が強く、尚且つ、国民の多くは『無宗教』と云う主義を持っている。

 故に、重大犯罪者として扱われたが、『聖書』重視主義者達からしてみれば、『アベる』を行なった『カイン』は責めてはならぬと、確か聖書に書いてあった気がする。

「だからと云って、犯罪者を裁かないのは法治国家として、許し難い事だし、そもそも、現代は犯罪者が多過ぎる」

 そう云う紗斗里に対して、総司郎は――

「だからこそ、『衆人がみな善をするなら、おのれひとりだけは悪をしろ。逆もまた然り。英雄とは、自分だけの道をあるくやつのことだ』と云う坂本龍馬の遺した言葉の通りだ。

 もっとも、英雄なぞ目指しては居ないし、『衆人がみな悪をするなら、おのれひとりだけは善をしろ』と云う事だよね。実は本人の言葉では無いらしいけれど」

「老害なんぞが独裁者を行うから、暴走して戦争と云う暴挙に出るのだしね!」

 この際、語尾を『しね!』にした事にも意味があると云う事を、皆さんは理解しているだろうか?

 『呪殺』しないで済むなら、『呪殺』なぞ試みないが、向こうはコチラの命を含めて、日本、特に北海道への侵攻を考えているらしいのだ。『呪殺』されても自業自得だろう?

 ある程度の、BGMの整理も行った。もう少し減らさなければならないかも知れないが、100%縁起が良いと云うのは、不可能に近い。

 『777』が真に縁起の良い数字なら、宝くじの何億かは当たっていたかも知れないが、残念ながら、『ラッキー数』では無い。

 『777』のツキが当たり前になっているのならば、然程の不幸が来ない代わりに、大きな幸福も、中々来ないと云うものだ。

 或いは、宝くじ当選からの破滅を逃れる為に、今まで当たって来なかったのかも知れないが、破滅しない程度の中当たりも無いと云うのは、中々に酷い話だ。

 そして、『二重にNo.1』であると云う運命から、同一人物説がある『サタン』と『ルシファー』になってしまい、『ルシファー』サイドが勇者を気取って『サタン』に呪いを掛けた。

 自らを呪うと云うその余りにも残酷な運命は、恐らく何となく気が付いていた。

 故に、何度か『オーバードーズ』による自殺を試みたが、全て失敗。

 だが、『己を呪う』と云う恐るべき事態が過ぎ去った後、心が比較的凪いで、自殺を試みようと思う気持ちも無くなったのは、恐らく良かった事だろう。

 何故か、いつも心の片隅にあった『大きな不安』が、『呪い』に掛かるのを契機に、失われたのだから。

 獅子身中の虫は、恐らく、自分で自分を呪う運命の事だったのだろう。

 だから、その特効薬である『牡丹』のツキである、数字の『6』が、『666』と云うアラシになって、襲ってきたのだろう。

 何も絶望する事は無い。『呪い』による『封印』が解けた後に、『希望』が待っているのかも知れないのだから。

 待っている言葉が『うすのろ魔抜け』であろうとも、そんな言葉を秘めている伴侶なぞ、求めなければ良いだけの話だ。

 少なくとも二度は、『世界級魔法』の行使に成功しているのだ。三度目は、出来れば『戦争を止めたい』。

 何故、人は『欲望』に負ける?大抵の戦争の切っ掛けは、自らの『欲望』を満たす為だ。

 つまりは、『強欲』。『マモン』だ。

 正直、魔王に呪いを掛けるのは、もう止めにしたいんだけどなぁ……。七大魔王に関しては、「『七つの大罪』の全てを背負う!」と意気込んだのだから。

 だが、『魔物』だとしたら、『ハマ』の名前が止められる筈だと思うのだが、あの『ハマ』はケラケラ笑っているばかりだ。

 『先達』としての権利は行使するものの、『義務』は果たしていない気がする。

 まるで独裁者だ。

 そんな支配者が率いる世界になぞ、入り込みたくはない。

 その水際になら――やはり、水際に入る覚悟をしなければ、成功は成し得ないのか。

 だが、『辰』は水の神様。

 水と――否、自らと戦え、と云う事だろうか?

 それならば、まだどちらが勝つかは判らない。

 ただ、いつになったら自分に勝った事になるのかも判らないし、いつになっても自らとは戦わないとならないとは思う。

 唯一つ。西暦2026年前後の数年間は、非常に警戒が必要だと思われる。

 ソレは西暦2026年が『丙午』と云う縁起が悪いとされる年であることと、数年の『ズレ』と云う可能性が否めないからだ。

 ただ、何となくその可能性は回避出来るような気がしているし、でも、油断すると不意討ちを喰らう可能性があるとは思う。

 『勝って兜の緒を締めよ』である。

 果たして、自らに完全に勝てるのか。ソレは甚だ疑問であった。