光の王

第3話 光の王

 筆記試験の後、身体検査を受け、あとは実技試験。
 
 お婆さんが、体力的な問題で実技を待たずにして不合格になり、筆記試験の結果は未だ出ていないが、それに自信の無い半数ほどが、既に自主的に不合格を待たずに実技試験を放棄している。
 
 この、実技試験を受けるために必要な、『αシステム』の入手こそが、最も難しい入試の課題だと云われているのだが。
 
「次、ベイス村のアース!」

「はい!」

 アースは、くじ引きで実技試験の内容を引き当て、『防御結界の破壊』という試練を与えられていた。
 
「(可哀想にな)」

 試験監督の一人が、隣の試験監督に耳打ちした。
 
「(俺、あの防御結界を張ったんだけど、偶然にも『JOKERシステム』が起動しちゃったんだよね。

 つまり、絶対無理。防御結界を相殺までは可能だけど、合格基準はあの崖に、『明らかに『αシステム』によるダメージを与えること』。
 
 ま、やる気があるなら、来年も挑んで来るから、良いよね?)」
 
 幸か不幸か、アースは耳だけでなく、五感のほとんどが優れていた。
 
 その会話も断片的に耳に届き、写真でしか見たことの無い(先ほど見たのが王子様本人で無い限り)彼女の王子様が届けてくれた、『αシステム』と同封されていた取扱説明書の古文書の知識を、フル動員する。
 
(……アレしかない)

 古代日本語で、『禁呪』と記されていた一つの魔法に思いを巡らしながらも。
 
 防御結界が張られたがけを見上げる。
 
 確か、そのずっと向こうには、世界で唯一の、製造が可能なX機関(正確にはECS機関。個人用では無い為、Pが頭につかない為、Xと略されている)が、この最先端技術都市を支えるエネルギーを無人で産出しているのみ。
 
 あり得ないが、そこまで被害が及んでも、人命に関わる事態にはならない筈。
 
 禁呪の記述には、暗号を用いられていて、一つしか、アースは解読していない。そして、それは今まで、試す事も躊躇ためらわれていた。
 
(万が一の事があっても、私だけのせいじゃないよね……?)

 気がかりな事はあった。
 
 禁呪は、三つあるらしかった。
 
 アースが解読したのは、その内の一つ。
 
 他の二つは、暗号を解読する過程で、『このよにはしらないほうがいいまほうがそんざいする』とか、『このきんじゅはあんごうをときあかすべからず』等と不穏な記入があったが為に、最後まで解読はしていない。
 
 世界最小であることを彼女自身は知らないが、『αシステム』たる彼女の指輪に、アースはキスをした。
 
「お願い、ね?」

 彼女は、両手を崖に向けて構えた。
 
「『光の王・Into=Worth』!」

 その瞬間、地表の全ての光が一瞬消え去り、その光の全てが凝縮ぎょうしゅくされて崖に襲い掛かったが、ソレは光のエネルギーを他に漏らす事が無かったが故に、その瞬間に何が起こったのかを、誰も見る事は無かった。