傲慢

第79話 傲慢

「過ちを犯す奴が多過ぎる」

 恭一は、その事を問題視し、改善策を考え始めた。

 昔は、今よりずっと規制が緩かった筈だが、ソレに反して、過ちを犯す者が、現代より少なかった。

 少なくとも、今の日本の状況と、昔の日本の状況の知識をすり合わせると、その事実を否定し切れない。

 恐らくは、子供の遊び方の変化が、その原因の大きな要素に関わっている。

 外で遊ぶことが、社会のルールを学ぶのに、大事な要素を担っていた筈なのに、現代は、ゲームのルールを覚えていくばかりだ。

「警察じゃあるまいし、取り締まりなんかしたら、ソッチの方が問題行動になるしな……」

 ソコは、警察が取り締まるしか無い。だが、そんな事をしているだけの余裕が、果たして今の警察にあるだろうか?

「人が、傲慢になって来ている……。

 最早、自分がルールと思っていそうな奴が多過ぎる」

 当然、そんなルールはまかり通らない。

 しかも、『傲慢』を司る『七大魔王』である『ルシファー』には、極めて軽度な呪いしか掛かっていない。

 コレが、『憤怒』を司る『サタン』になると、強烈な呪いが掛かっているのだが、『サタン』と『ルシファー』の同一人物説を知らない者も居るだろう。

 そして、正しく『サタン』であり『ルシファー』でもある、二人分の魂の宿った人間なぞ、極僅かにしか居ない。

 だからと云って、『ルシファー』に呪いを掛けるなぞ、自らに返って来ることが確実な呪いなぞ掛けない。

 でも、もしも、あの男が傲慢になる事で加護を得ているのならば。

 ――掛けなければならないかも知れない。確実に自分にも返って来る事が判り切っている呪いを。

 或いは、あの男の死亡説が出たのは、その影武者の一人が呪殺されただけなのかも知れない。

「俺としては、北方四島の返還要求を今後行わない事を条件に、北海道及び日本侵攻をしない、強い約束が欲しいのだけれどもな」

 ただ、そんな一人の男の意見だけで、日本国民全員を代表して言う訳にもいかない。

「結局は、人間は欲に勝てないと云う事実があるだけだろうにな」

 欲にすら勝てない者は、恐らく自分自身にも勝てないであろう事実があるだけで、実際、欲に勝てる人間は少ない。

 ソレは恐らく『欲』が人間を発展させるのだろうが、だからこそ、強過ぎる欲、『強欲』は七つの大罪の一つなのだ。

 しかし、日本はココ十年以内位の間に、小さな島とは言え、領土を侵犯されている。ソレは、取り戻す戦争の口実になり得る。

 だが、平和主義者・日本は、ソレを切っ掛けに戦争を起こさなかった。

 だから、舐められているのだろう。

 次がもしあったら。それも、小さな島ではなく、大きな島を奪われようとするのならば。

「日本が戦争を行う、大義名分は成り立つよな。

 むしろ、ソコで容赦するようじゃ、日本の全員が『負け犬』になる」

 そして、露に対して絶対的な優位を誇っていた国・独も、露の安い戦闘機の神風アタックをされたら、意外と脆いから、役に立たないんだよな」

 神様がバランス調節を間違ったとしか思えない。

 だが、その事実を発見したのは、己自身なのだ。

 自業自得としか思えない。

 もう、諦めてしまえと思わない事は無い。

 だが、諦める事は愚か者のする事だ。

 しかし、一方で座右の銘は『人生、諦めてからが勝負!』なのである。

 自らを愚者と認めざるを得ない。

 勝ち目の有無すら判らない。

 大事な時に、役に立たないものだ。

 EVILの勝ちにしてはいけない。

 だがその文字の中に、何故Vを入れるかよ。

 Vは『Victory』、『勝利』の象徴となる頭文字だ。

 否、向こうもコチラも、サタンである事には変わりないのだ。

 謂わば、EVIL V.S. EVILの戦い。

 どちらが勝とうが、戦争になった時点で双方負けに等しい。

 最悪、世界の全てが滅ぶ。

 そしたらまた、ゼロからやり直し?

 冗談ではない!やり直しは断固断る!

 全会一致の運命なのか?!

 否、違う運命も存在して居る筈だ!

 だが、余りに思い切った行動は出来ない。少なくとも、母親を見捨てられない。

 それが弱みであり、強みでもあるのだった。