第12話 体感6時間
元々、このゲームは時間の経過が体感6時間でゲーム内時間の24時間が過ぎるものであった。
今も、ソレは変わらない。
体感時間の加速。運営側が加速剤まで使って行ったのは、ソレだった。
但し、その評判は頗る悪かった。
曰く、ちょっと小一時間居眠りしたら、70日程、ゲーム内時間が進んでいた、等。
睡眠時間を6時間としても、ソレだけで一年以上のゲーム内時間が過ぎる事になる。
その不評を得て、運営側は元の設定にシステムを戻した。
運営側としては、ゲーム内時間を長く楽しんで貰えるようにとのシステムの導入だった。
それが、こんな不評に終わるとは、予想していなかった。
そもそもが、加速剤の導入が問題であった。
人によっては、幻覚・幻聴等の症状が現れたりしていた。
1728倍速の導入は、導入から僅か一週間で打ち切られた。
尚、ゲームそのものに対する不満が高まった訳では無かった事が、不幸中の幸いであった。
加速剤まで使ってのゲーム内時間の延長は、脳をはじめとする肉体の各部に支障が出るし、そもそもコンピューターの処理にも問題が生じたのだった。
報告が上がる、バグの類。
ソレは、処理が速いが故に多くの報告が上がり、1728倍速の処理の打ち切りで、それらのバグの件も、7割方落ち着いたのだった。
ゲーム内時間と体感時間が同じでは、睡眠時間に当たる夜の時間に出来る事が制限され、その為、体感4倍速は適切であった。
何故、1728倍速等と言う超高速化を試したのかと云えば、ただ単に、『限界に挑戦したかった』と云うのが運営側の本音だった。
だが、『ログアウト不可』のエラッタは、運営側も想定外の事態だった。
故に、ゲーム内時間で72日間、体感で18日間のログアウト不可の事態は、それでもリアルタイム1時間で解消されたのは、運営側の努力の成果だった。
と云うか、リアルタイム1時間のログアウト不可の現象は、加速剤の効果時間を考慮した、イチ技術者による『仕様』であったことは、内内に処理され、公開されることは無かった。
体感18日間のログアウト不可と云う現象も、大概のプレイヤーが、その最中に睡眠に陥ってしまい、気が付いたら解決していたと云うのが実情だ。
それを試験期間も無しに適用したイチ技術者は、責任を問われるも、実情を明かさぬ為には処分する訳にもいかず、今もなお、新たなシステムの導入を目論んで、試行錯誤に明け暮れている。
そんな状態でいいのか?!とは思われるが、彼は有能である事には有能ではあったのだ。
オリジナル魔法の生成システムも、彼が組んだと云えば、ある程度はその有能さを分かっていただけるだろうか?
ともかく、その一件は解決したと云える。
これ以上、責任を追及しても、先の無き事であろう。
又、オリジナル魔法の生成のシステムについては、卯辰の行った事に、ある一定の制限を設ける事で成り立っているのだが、卯辰はまさか、自分のやり方が参考にされていたとは予想だにしていなかったのだった。