第38話 世界の二極化
世界が物語化している。
人によっては、『だからどうした』と云う問題だろうが、今、犠牲者と成功者の二極化が、極端に進んでいる。
子供の頃からの、計画的な成長。恐らくは、ソレが実り始めているのである。
逆に、『計算して』生きている者は、臨機応変になりがちで、逆に計画的に生きられず、精神を病む事も多々ある。
『〇〇界の神様』的な存在が、次々に現れている。
恐らくは、コレを神話とし、次の世界が作られるのだ。
『終末時計』は、残り1分30秒程度だそうだが、ある根拠を基に、『終末時計』は人間の努力次第で、未だ7割程度しか過ぎていない可能性がある。
『終末時計』の始まりは、『西暦1947年』であるそうだから、計算すると、西暦2055年頃に、世界の終末が訪れる可能性が高い。
意外と長いのか、意外と短いのか。人によって、解釈は様々であるが、未だ7割しか進んでいないのならば、終末時計は『16時48分』頃と云う事になる。
季節によっては、もう暗くなり始めている頃合いである。
『未だ明るい』時間なのか、『もう暗い』時間であるのか、甚だ謎であるが、あと約32年しか無いのであれば、『もう暗い』季節であるのかも知れない。
そもそもが、『コロナ禍』こそが、日暮れを告げる鐘の音のようである。
――だからか。
恭次は思った。
「『常世』が美しい星空の世界だと表現されたのは、もう星空を眺める夜中になっている、って事か。
あの阿呆が見たのは、どうやら昼間の『常世』だったみたいだがよぉ……」
直接的に会話は出来ないが、隼那や恭次には、その『阿呆』の得た情報を得る手段があった。――『Fenrir』。リードマインドーー読心術の能力を得られるサイコソフトによってである。
「『七つの大罪』にばかり目が行って、『七元徳』を広めて来なかった、過去の多くのクリエイターの持つ罪悪よな」
「でも、『七元徳』を一つでも徹底的に行う事は、人間にとって、一種の修行よ?
それは『七つの美徳』であっても変わらないわ」
「逆に、『七つの大罪』は、殆どの人間が持つ、背負わなければならない『業』だぜ?」
「だから、『キ〇〇ト教』の教祖は、『七つの大罪』の全てを背負って、神に”赦し”を求めた。でも、”赦せない”存在として、七大魔王の存在もヨゲンしたけど、コレが余計なお節介なのよねぇ」
「『七つの大罪』の全てを背負おうとした事自体は、あの阿呆と変わらない行いなのにな。片や聖人で片や魔王だ。
全く、あの阿呆は損な役割ばかり背負わされているぜ?」
「1999年の『世界の終わり』を信じて、抵抗する努力もせず、その先を生きる覚悟も無ければ、まぁ、人生は躓くわよね」
「『もしも世界が近い将来に滅びるとしたら』と云う前提で、『遊びまくって』いればな。その先の人生を生きるのは苦行だろうぜ」
そんな話をしながらも、隼那は『クルセイダー』のバチカン市国本部に、式城 紗斗里宛のサイコソフトの代金の振り込み依頼をネットでしたが、コレが何度も無視されているのだ。
だから、隼那は『Swan』による売り上げの上納を止めていた。
ソコから、サイコソフトの代金の振り込みの資金を捻出しようとしていた。
「ローマ教皇も、悪趣味よね。
ルシファーがサタンに『呪い』を掛けたから、それを祝って日本を訪れていたなんて。
アレ?先代のローマ教皇の話だったかしら?」
「どうであろうと、サタンの内、何柱かは死んだ。
ルシファーも、同一人物であるサタンの人格を畏れる余り、自分自身に呪いを掛けたんだからな。
お陰で、あの阿呆は通勤する体力も持っちゃいない」
「ねぇ。コレって、私たちがあの阿呆を誘導しているのかしら?それとも、私たちがあの阿呆に操られているのかしら?」
「別に、どっちだろうと俺は構わんがな!」
不安げな隼那に対し、恭次は堂々としていた。
「『阿呆』じゃなく、『亜法』かも知れんがな!」
そう云って、恭次は嗤った。
「それって、どう云う意味?」
「俺たち『クルセイダー』にとっての法律、『ルール』なのかもな、ってな!」
恭次は嗤うが、隼那にとっては、全く笑えないお話であった。
「ソレって、私たちはアイツに逆らえない、って意味?」
「逆らうつもりも無いね!
アイツは俺たちを、『格好良く』しようとしてくれる。
こんな有難い事は、他に無いぜ?
下手な神様よりも、よっぽど俺たちの願いを叶えてくれる」
「――確かに。こっちの世界には、もう殆どコロナウィルスは存在していないみたいだしね!」
問題は、『ベルゼブブの魔女王』の抱いた殺意なのだが、ソレとは存在次元の違う彼女らには、関係の無い話だった。