第34話 レズィン負傷
「レズィン!お願い!」
ラフィアの手から、剣が零れ落ちる。隙を窺っていたレズィンは、素早くそれを拾い上げて構えた。
プシュッ。
それは、小さな音だった。
レズィンは腹に違和感を覚え、直後にソレは激痛へと変わる。
剣を持ってなどいられなかった。
倒れながらレズィンは、皇帝の手の内に、いつの間にはサイレンサー付きの小さな拳銃が握られているのを目にした。
「レズィン!」
悲痛なラフィアの叫び声。
シヴァンの方は叫ばずに動いていた。
あっという間に皇帝との間合いを縮めると、右手でラフィアを引き離し、左手を皇帝に叩き付けた。
ガラスの割れるような音と共に、皇帝は部屋の外まで吹き飛ばされ、廊下の壁に叩き付けられた。
殴った時の異様な感触に、シヴァンは一度、左の拳に目を向けた。
廊下の外に居た見張りが皇帝の下へと駆け付け、部屋の中に向けて銃を構えた。
部屋の中では同様に、ラフィアがレズィンの下へと駆け付ける。
「レズィン!死んじゃ、駄目ぇーっ!」
レズィンは倒れたきりピクリとも動かず、ラフィアが幾ら身体を揺さぶっても、目を開こうとはしなかった。
呼吸はあるので、激痛で気絶したのだろう。
だが出血が酷く、床に血溜まりが出来ていた。
「ひどい……。
何てことするのよ!」
「正当防衛だ。
それより、聞きたいことが山ほどある。
ディナーへの招待を受けてくれれば、その男の治療をさせよう」
「嫌よ!あなたみたな人となんて!」
「姉さん!」
感情的になって拒絶したラフィアを、シヴァンは窘める。
「早く治療しなければ、その男は助からないぞ」
ラフィアはレズィンの手をぎゅっと握り締め、悔しそうに唇を噛んだ。
「……分かりました」
ラフィアが了承すると、皇帝が傍にいた二人に指示を出し、すぐに病院に運ばせる。
ついて行こうとするラフィアは止められ、そのまま屋敷の奥へと案内された。