第26話 ヨゲン
最早、世界は2026年に滅ぶように進んでいるようにしか思えない。
卯辰はつくづくそう思う。
ただ、自らの責任も感じずにはいられない。
2020年から始まったコロナ禍。ソレに重なる、2000年に誕生して2020年には優秀な死神たちが候補生を卒業する物語。
風邪が恐るべき病気となると云うヨゲンめいた記述をした物語。パンデミック直前に遊んだ、その名も『パンデミック』と云う名のゲーム。
流石に、コレだけ要素が整うと、呪わねばならない。――卯辰をサタンになるまでイジメ挙げた多くの者たちを。
呪いは実在する。ソレは、卯辰が身をもって思い知った。
『うだつが上がらない』と云う概念の存在自体が、卯辰に対する呪いそのものであろう。
神様は、全てがこうなるように世界を作っていた?!神様の趣味、余りにも悪過ぎるだろう。
恐らくは、世界は、『思い込み』によって滅ぼされる。その芽を、卯辰は余りにも撒き過ぎた。
道理で、一本として作品が出版されない筈である。
もしも、その事に二十歳ちょっとのあの頃に気付いていたら、他の道を選べただろうか?
――いや、否だ。
そもそも、そう云ったこの世のルールに気付いていなかったし、ソレに逆らおうとする気持ちは、きっと強かっただろう。
そうして、このように、卯辰は自らの作品を『挙げて行っている』。
それだけではダメなのだが、卯辰にはそれだけしか出来ない。
それが精一杯なのだ。
故に、ココに『悪い見本』として、ヨゲンを残してもいいんだ。
ソレが当たったら、皆は卯辰を畏れてくれるのか?違うだろう?
ならば何故、宗教の教祖のヨゲンは畏れる?皆が信じているから?余計にヨゲンの精度を上げるだけでは無いか!
宗教の教祖は、大概、終末ヨゲンをしている。なのに、何故信じるのか!
――皆、自らの罪や業を、俺に押し付けたいだけだろ?
俺は死後、巨大恒星の中心で概念の喪失まで焼き尽くされる運命らしいから、背負ってやるよ、その罪や業。
但し!犯罪の刑罰を代理で受けると云う意味ではない!犯罪に走る阿呆共など、割に合わない刑罰を受けて、来世では改心出来る事を願えよ!
まぁ、犯罪に走って甘い汁を吸おうとする奴ら等、幾輪廻を繰り返しても改心などしないだろうとは思うが。
一度、思いっきり痛い目を見れば良いのだ。二度と繰り返したく無いと思う程まで。
さすれば、一人ずつでも、輪廻を繰り返す度に改心する者たちが現れるであろうよ。
でなくば、この世は幾ら繰り返しても救われない。
で、あるからして、俺は先ほどの『悪い見本のヨゲン』として残そうとしたものを、自らの全力を以てジャミングする。
でなくば、俺も救われない。
『ハンカクサイ奴は死ね』なら、もう言われた。
だが、俺は半覚醒から完全覚醒を目指している。
薬で封印されていたとしても、目指すことを変更したりはしない。
卯辰として、『上がらない』運命に逆らうべく、抗うつもりである。最期の時まで。