第29話 ムーン=ノトスの苦悩
現在に残された、数少ないインターネットに接続されたパソコン。
ムーン=ノトスは、一台だけソレを確保していた。
まずは、『あ』から順に問題が無いものか、確認してゆく。
『ほ』に問題がありそうだ。
だが、それはすぐに解決された。……間違い無いか?本当に大丈夫そうだ。
次。
『きゅ』、若干気になる。九州に救世主が休憩?まぁ、そちらに任せよう。
次だ。
『きょ』、当然、脅威であろう。狂気も、供給停止も。今日、協力することが何だと?……分からん。
『しょ』、処刑は不味いだろう。ああ、そうか。あの件は、既に手遅れになっているのか。ならば、代替行為ももう不要だろう。
……駄目だ、この手段にも危険が潜んでいそうだ。
――意味が無いのであろうか?情報が断片的過ぎて、全体像が見えてこない。
パソコン一台の能力では、やはり限界がある。
「しかし、人の欲と云うものは、限りの無いものなのだな」
望むとするのならば、確かに限りの無いものなのだろう。だが、『吾唯足るを知る』を実行すれば、望むものなど、平和な毎日位のものであろうに。
ふぅー、とムーン=ノトスは一息ついた。
果たして、この行為も無駄か有益か、それすらも分からぬと云うのに。
無駄な事など、一つも無い?果たして本当か?
信じる者は救われる?逆では無いか?疑う者こそ救われるのでは無いか?
――いや。やはり、ある程度は信じる者は救われる。だが、100%では恐らく無いだろう。
世の中には、人を貶める人がいる。だから、時には疑わねばならない。
――そう云えば。
ムーン=ノトスは一つ思い出した。
何故、古代の遺跡にX機関を使った罠があるのか。
その理由に、一つ仮説を立ててみた。
100%正確率のXコア。その存在から何かを守る為に罠を設置していたのでは無いか?
自我を持つXコア。そんなもの、ただひたすらの脅威でしかない。しかも、意思の疎通は出来ない。「話せば分かる」で済めば良いのだが……。
期待薄だろう。意思の疎通が出来た存在とは思えなかった。初撃から殺しに来ている。範囲は一部屋程度のものであったが、オートイージスが発動していなければ、ムーン=ノトスは死んでいた。
「二度と試すべからず、だな」
その事についてはそれで済ませるとして、ムーン=ノトスは今、何をすべきかを再び考え始めたのであった。