第5話 ヒロイン達の謎
──Side:デッドリッグ
現時点で6人。ヒロイン達がバルテマーを見限っているらしい。
密かにバルテマーの意向も確認するが、追加コンテンツのシルエットしか判っていない8人目のヒロインが本命らしい。
出来れば、同時に入学して来る7人目のヒロインもバルテマーに攻略して欲しいのだが、ソレが中々の難題なのだ。
何しろ、参加するイベントが被る。まぁ、7人全員攻略コースもあったのだから、その程度は大きな問題にならないのだが。
問題は、8人目のヒロインの攻略条件が判明していない事にもある。
まぁ、7人の攻略条件は、ちょっとした贈り物をする等、アイテムは限られているが、その程度で攻略出来てしまう。……筈だった。
まさか、ヒロイン6人が前世の記憶持ちだったとは……。
因みに、ヒロイン7人がバルテマーに未攻略の状態で、デッドリッグの救済が行われなかった場合、少なくとも今揃っている6人のヒロインは悲惨な末路の情報の共有済みだ。
ついでに言うと、ヒロイン7人がバルテマーに全員未攻略の状態で、全員デッドリッグに因る救済の場合、開拓初期だが広大な領地を与えられ、デッドリッグが公爵になる。
その場合、バルテマーは政略結婚をして、皇帝位を継ぐ。
相手は、どこぞの公爵の娘さんだった筈だ。バルテマーの3つほど年上の。
美人だが、『悪役令嬢』の二つ名を与えられる程、人気の無いキャラクターだった。
確か、バルテマーが3年生になって早々に、婚約が結ばれる筈だ。
ヒロイン6人にしてみても、そんな相手に権力を握らせるのはマズい、と云う認識だ。
だから、シルエットを見た瞬間に判明する、追加コンテンツの8人目のヒロインが、益々望まれる訳だ。
とりあえず、俺としては3日に一度の頻度で、少なくとも6人のヒロイン候補達の相手をしなければならないであろうことは確実だ。
全く、頭の痛い話だ。
……役得?一度不満が出れば、断罪される立場の俺が、本当に役得だと思うか?
そして、全員が入学式の最中に前世の記憶に目覚めたのだ。
7人目のヒロインと、追加コンテンツのキャラが現れるなら、その二人は未だ前世の記憶は無いだろう。
果たして、追加コンテンツの8人目のヒロインは、どう云う記憶を持っているものか、甚だ疑問だ。
それも、ヒントはシルエットのみで、攻略情報も不明。
バルテマーは、キチッと8人目のヒロインの攻略を果たしてくれるだろうか?
それに、俺も公爵になった後の計画など、一切明らかでは無い。
正直、公爵になった後の立ち回りの方が本番だと思うんだよねぇ~。
現時点でも、子飼いの軍兵を雇うのは、ほぼ決定事項なんだよね~。
どうしてこうなったも何も、所詮は悪役の末路だ。せいぜい、開拓を頑張るしかない。
その際には、ヒロイン達を含め、自らの前世の記憶を頼りにする他無い。
故に、デッドリッグはヒロイン候補達に、こう問いたいのだ。
即ち──開拓地へ移住して迄、俺と添い遂げたいのか、と。
恐らく、そこまでの覚悟は出来ていないに違いない。
素直に、バルテマーの正室・側室になれば良いのにと、デッドリッグは心の中で思い続けているのだった。