第20話 バグデス
ソレは、露から始まった。
蝗害が起こったのだ。
それも直ぐに、モンゴルを経由して中にも広まった。
中は、金にモノを言わせて、食糧品を買い漁り、事無きを得ようとした。
だが、ココに来て日韓米の三ヵ国との事実上の敵対状態であることが災いして、中々十分な食糧を得られず、餓死者が朝中露の三ヵ国で続出した。
韓は、協力体制を持っている、主に米の食糧の輸入で乗り越えたが、蝗害は受けていた。
日本は、蝗が海を渡るのは流石に厳しかったのか、蝗害そのものを受けていなかったが為に、米だけは十分にあった。
その他の食料品の、中による買い占めに苦しみはしたものの、日本からの中への輸出も止まっていたことで、外貨は得られないものの、飢える程では無かった。
朝は、事実上の韓の支配下にあり、朝による統治の時よりは、よっぽどまともに大半の人々がしっかりと食えていた。
「まぁ、蝗が来たら、俺が焼き払うけどな!」
恭次は、そんな言葉を吐いて強がっていた。
日本のクルセイダーでは、対蝗警戒態勢が確りと取られており、24時間監視態勢にあり、発見次第、人を遣わせて焼き払う準備が進められていた。
『本日も異常無し!』
夜が明けて起床すると、その報告を聞いて恭次は安堵する。
残念ながら、今回は女性陣より男性陣の方が頼りになる。
何せ、武器は槍一本で戦うヴァルキリー隊に対し、範囲型攻撃サイコソフトである『ドラゴン』の使い手は、大半が男だったのだから。
そして、『焼き払う』と云う意味では、『Salamander Scarlet』プロメテウスの使い手である恭次が最有力の主力となる。
同時に、楓の方でも情報を仕入れ、対策に動いていた。
『Locust Black』バグデスを完成させたのだ。
虫だけを殺す専用のサイコソフト。その使い手を考え、今度は楓から恭次達へと接触を取ろうとしていた。
幸い、喫茶『エルサレム』の場所も覚えている。
だが、今や彼女は大和カンパニーのイチ技師としての社員である。勤務日には疾刀と奈津菜と共に出勤しなければいけない。
何せ、彼女との繋がりにより完成するのが、『SCAI』式城 紗斗里なのだから。
バグデスが完成するも、ヤキモキとした時間が過ぎて行く。
そして、週末。エルサレムを訪れる日が来た。
「楓ちゃん?!」
彼女は、驚きを以て受け入れられた。
相談は、これから始まろうとしていた。