トレード

第39話 トレード

 ムーンは、まずコアの末端価格を調べる事から始めた。
 
 結果、1㎝玉が金貨1万枚というとんでもない値段を知った。
 
 ムーンは即座に、コアの価格を引き上げた。9㎜玉は金貨4万枚に、8㎜玉は金貨16万枚に。
 
 はっきり言って、必要とする者の中でも、王侯貴族の類にしか買えぬようにした。
 
 ――それでも売れた。世の中に、コアを必要としてる者が如何に多いかという証拠にもなった。
 
 そして、今度発生したのは、コアのサイズの誤魔化しだった。
 
 9㎜玉を8㎜玉だと言い張り、だまされて売られた者からクレームが来た。
 
 ムーンは、自分で売り払ったコア以外に関しては、そのクレームの一切を無視した。
 
 その一方で、ムーンが直に売るコアに関しては、サイズの確認を行ってから売却する事にしていた。
 
 それ故、ムーンが直に売ったコアに関してのクレームはほとんど無かった。
 
 ただ一点、8㎜玉だと言って売ったコアを9㎜玉のコアを用意してクレームを付けた者がいたが、自警団に立ち合いの元で、事実確認を行うと、あっさりとボロが出て、商人側がお縄についた。
 
 サトゥルの腕は確かだった。
 
 最早、8㎜玉を安定して作れるようになっていた。
 
 ただ、7㎜玉は難しいと言う。それでも、8㎜玉の在庫を抱えた今、ムーンは7㎜玉の作成を依頼した。
 
 そう、8㎜玉の料金金貨16万枚は、流石さすがほとんど売れる事は無かった。それでも、たまに上級貴族は買って行く事があったが。
 
 7㎜玉が初めて完成した時、サトゥルとムーンはささやかながらお祝いを開いた。二人で飲みに行き、翌日は昼まで休んだ。
 
 そして、7㎜玉の値段を、金貨70万枚と定めた。
 
 それでもまだ、最初の一個は売れた。
 
 それからしばらくは、7㎜玉の作成への挑戦の日々だった。
 
 噂では、7㎜玉のコアは、金貨100万枚でトレードされたと云う話だった。
 
 だが、その程度であれば、未だ想定の範囲内と、ムーンは問題視しなかった。
 
 流石に、それ以上での売買は予想出来ないし、量産とは言わなくとも、1日に1個位は7㎜玉を作れるサトゥルが居れば、買う者はムーンから直接、という話になるだろうとの予測からだ。
 
 その、7㎜玉のコアを金貨100万枚で売った商人に対しては、ムーンは以後、コアを売らないという措置そちを取った。
 
 買い取った商人が一人なのだから、7㎜玉を買い取った商人は明らかだ。
 
 文句は言われたものの、売買の利鞘が大き過ぎると云うことで、今後の商売の一切を断った。
 
 そして、ムーンは商売としてのコアの売買を止めた。
 
 サトゥルには、7㎜玉のコアが十分に確保できてから、6㎜玉への挑戦を申し込んだ。
 
 結果、1ヵ月に1個というペースでの作成が可能になった。
 
 ムーンは、その6㎜玉も十分な数になるだけの確保を試みた。
 
 6㎜玉がある程度作れた後のある日。
 
 サトゥルが行方不明になった。