第11話 スパイ
最近、露からのスパイが増えた。
隼那は、そう感じていた。
――やはり、北海道に侵攻して来るのだろうか?
北海道では露のスパイが目立っていたが、本州では中からのスパイが目立つらしい。
同時侵攻を狙っているのだろうか?だとしたら、朝も黙っている筈が無い。
だが、朝がまず攻めるのは韓国だろう。
要は、米からの支援に対し、飽和攻撃を仕掛けたい狙いだろう。
このままではマズい。何がマズいって、日本が戦場になった時点で日本は敗北だと判断した軍部が、革命を起こしかねないのだ。
そして、米の支援を得て、先手を取って露と中に攻め込む。
正直、二正面作戦は賢い選択肢とは言えないが、一方を攻めたら、もう一方が攻めて来る。
朝中露の三国を戦場にしないと、勝ち目は無い。
そもそもが、露が宇を攻めた後に北海道も頂くと、そう意味する発言をしたのが、何よりの間違いだ。
ココで、露のトップが亡くなり、次期首相が和平交渉して来れば、未だ戦争まで発展しない可能性はある。
しかし、ココで恐らく、中東の戦争問題が持ち込まれるのだろう。
冷静に考えれば、双方に非があり、喧嘩両成敗が日本人の感覚で言う落としどころだが、ソレでは双方共に納得しない。
そもそも、双方が共に納得する選択肢など存在しないのだ。
だから、一方を殲滅しようと、安易な考えで攻め込んだ側と、壁まで作って侵入を防ごうとした側と。
双方共に、やり過ぎたのだ。だが、恐らく結末は一方の完全に近い殲滅でしか決着は着かないだろう。
故に、攻め込んでいる側に加担しようとする、『勝者至上主義者』たちの何と安易な事か。
慈悲の心の一つも持たない。――そうか、奴らは揃ってサタンか!
このままでは、『サタン至上主義者』達の支配が広がるばかりだが、宗教と云う狂気の齎す『自称・正義』の愚か者共。
隼那は、ソコにまで手を回す余裕は無いが、海外のクルセイダーは既に動いている。
即ち――殲滅した方が『正義』を主張出来るならば、攻撃を始めた側を殲滅すると云う、泥沼の選択肢。
ココに、何処かの国の作った、『コロナ』と云う風邪の力は絶大だった。
表立って攻撃している訳では無いが、攻撃を始めた側の人々の、死に至る風邪の蔓延。
風の様に自由に振る舞う者が、邪な考えを持てば、風邪になるのは当然であり、ソコに死に至る『コロナ』と云う風邪が存在すれば、死者は増える。
そして、彼らに贈るべきは、『塩』である。
壁の破壊程度で攻撃を止めておけば、事はもっと平和的に解決したかも知れないが、最早、反撃する側も『正義』を主張して戦える。
その際に有力なのが、『風邪の蔓延』と共に風自体をコントロール出来るサイコソフト、『Aeorus』だった。
そして、そのサイコソフトは、対朝中露戦争に於いても、有用に活用出来るのであった。