第24話 サトゥルの仕事
「うへぇー、魔法を使う技術かよ!」
サトゥルは、飲み込みの早い若者だった。
「という訳で、君用の『αシステム』を用意したいと思う。
ついて来てくれ」
ザッと『Alpherion結晶』の作り方を説明してすぐに、それの必要性を飲み込めた。コレは、将来が有望な証拠だ。
「ほわぁー、厳重な封印してるんだなぁ」
『αシステム』保管庫に行く際、扉の開け方は見せてしまったが。
「真似して扉を開けようなどと、考えない方が良い。
最悪、死ぬ」
「うお!おっかねぇ。
そこまでして封印する価値が――どうやらありそうだなぁ……」
其処彼処に置かれている『αシステム』。それを見て、サトゥルは納得した。
「『地の女神』で良いのがあれば、最適なんだがなぁ……」
ムーン=ノトスは目標の『αシステム』を探して回って――
「あった、コレで良い」
魔法の杖状の『αシステム』を見つけ出した。その杖には、後端に台座が作られて直径3㎝ほどのXコアが埋め込まれた、『地の女神』タイプの『αシステム』だった。
「ついでに、『オートイージス』も仕込んでおこう」
ソレが無いと、『100%真球』のコアが出来てしまった時に危険であるし、無いと恐らく死に至る。
「ちなみに、真球型のコアに拘る理由って、聞かせてもらえたりする?」
「恐らく、最も効率的だと考えられるからだ。
先人の知恵は使うべき。発掘したコアが全て球形なのには、恐らく合理的な理由が存在する筈だ」
しかし。正八面体は、100%正確率を叩き出してしまった。
ソチラの形の方が性能が高い可能性は、僅かにだが考えられる。
それは、これから検証してゆけば良いだけの話だ。ココで無駄に晒して良い情報とは思えない。
「恐らく大丈夫だと思うが、直径5㎝のコアを、100%真球から結晶一つ分だけ足りない・又は多い、というものを作って貰いたい。
とりあえず、それなりに着実に作れるようになるまでは俺が指導して行くが、信頼の置けるレベルで作れるようになったら、ただひたすら、理想に限りなく近いコアを作って貰いたい。
まずは俺が見本を見せるから、『魔力視』のスキルを使って、やり方を学んで欲しい。
質問は受け付ける。だが、遅くとも10個の見本を作る前には、やり方を習得して欲しい。
求める性能のコアを作れなくても、キチンと努力してくれれば報酬は支払うが、求める性能のコアを作れるようになって行ったら、追加報酬を支払う。
この条件で飲めないならば、考えを改めねばならぬが」
「作れなくても、最低限の生活の保障はしてくれるだけの報酬は支払われる、ってこと?
その程度の報酬を支払ってくれるなら、引き受けても良いよ。
追加報酬っていうのは、性能次第で色を付けてくれるってこと?」
「ああ。
俺が求めているレベルのコアを安定して作れるようになった場合には、Xコア製作の第一人者として、それ相応の扱いをして、余所にも発表する。
但し、ノウハウを後世に残す為に、ノートに作業工程やコツを、記して行って貰いたい。
あとは……そうだな。無理の無い範囲内で、俺がコア作成の指示をしたら、それには従って貰う。
コレに関しては、契約書を交わさせて貰う。
安定して作れるようになったら、急に頑固になって、『そう云う気分じゃない』とか言われて依頼に応えて貰えないのは、非常に困るからな」
「へぇ……土鉄を良く分かっているじゃないか。
おいらにも、そんなに頑固になる時が来るのかなぁ……。
未だ想像もつかないや」
「そんな想像をしながら作業されると、非常に困るのだがな。
さあ、まずは作り方を会得するところからだ。
良ーく見てくれ。質問は随時、受け付ける」
「分かった!」
そしてサトゥルは、その日の内に粗くはあれど、Xコアの作成方法を覚えるのだった。