第85話 コキュートス
「恭一!コレ、紗斗里ちゃんからの支援物資!」
「おう!……ってか、『Dragon』亜種かよ!
他の適合者を探してくれ!」
「それが……使用には要注意とあるのよ。
下手な人には任せられないわ!」
「畜生、そうかよ!
でも、俺は要らないぜ!
……ん?何だ、この但し書き。
コキュートス?!
紗斗里ちゃん、世界を終わらせる気かよ!」
温暖化し過ぎた現代を、再び氷河期へ。紗斗里としては、その程度のつもりであった。
結果、小さな世界の一つや二つ、滅んでも仕方ないとの思いもあったが。
その過程で、核戦争が起きるのならば、最早仕方がない。
地球は、果たして再び、生命を作り出すであろうか?
そして、絶望的な事に、『水のサタン』が再び政権を握った。
『切り札』も、再び政権を握るだろうか?
『Lana』!コレが、お前の望んだ未来か?!
呪殺も、『天秤』であるが故に効かない。
ああ、そうか……。俺は、富士山にすら、呪われているのか……。
いっそ呪殺して欲しいが、どうやら俺は『呪殺無効』の能力持ち。
どうしろと言うのだ!?
もう、こうなったら、面白おかしく生きて、死ぬ時はサクッとアッサリ、死なせていただきたい。
痛んだり苦しむのならば、地球を呪う。
マグニチュード12の地震でも起こして、パックリ二つや三つに割れてしまえばいい!
ただ、ソレが起こる迄の時間が、480万年なのだろうが。
だが……。俺が最善を尽くせば、何となく悲惨な最後は、2026年より遥か先の話のような気がするのだが……。
実際、どうなのだろう?
「露よ、今は撤退してやる。
だが、もしも日本・北海道侵攻を行うのであれば――」
恭一は、露首相を目掛けて、『Gungnir』を放った。
ソレが果たして刺さるのか、それとも何の効果も無いのかは判らないが、警告である。
露国民は愚かな選択をした。
ああ、何となくデジャヴを感じたよ。
「存在次元が違う。だから、当たらないのかも知れない。
だけど、もしも日本の一部若しくは全部、特に北海道を得ようとするのならば、それなりの覚悟をする事だな!」
現実世界に、未だ『Gungnir』は無いのかも知れない。
でも、『Gungnir』ミサイルならば!
『ICBM』。大陸間弾道ミサイルに『Gungnir』と名付ければ、少なくとも6発放てば、討てるであろう。
日本は『イージス』によって護られている。もしかしたら『Gungnir』も防げるかも知れない。
余り触れたくなかったが、露より伊蘭を叩く方が効率的かも知れない。
日本は手を出せない。だが、米で頭の働く者が居れば……。
口実が必要になるかも知れないが、既に何ヵ国にも軍事的支援をしていることだけでも十分な口実だろう。
だから、伊蘭なぞ要らんのだ。
「核の冬に依る氷河期か、コキュートスによる氷河期か……」
いっそ、月が地球にぶつかって、氷河期が来れば……。
月一個分の資源を得られて、地球さんが頭を冷やす、良い機会になるかも知れないが。
残念ながら、月は徐々に地球から遠ざかっているのである。
徐々に近付いて来ているのであれば、希望を持てたかも知れないが。
本当に、残念でならない。
もしかしたら、地球の大気圏も、徐々に宇宙に拡散しているのかも知れないのだ。
だから、大きな低気圧である台風も、徐々に増えているのかも知れないのだから。