第15話 ゲーム専用機
「どどど、どうしましょう、老師!」
「ん?どうしたね、天倉さん」
昼姫は焦っていた。そりゃ、いきなり理由も判らずにスポンサーからの追加報酬を申し出られたのだから。
「スポンサーからの追加報酬です!
未だ、税金の申告の時期まで時間があるから、対処は頑張れば出来ますけれども!」
「ハハハ、頑張らないと、対処出来ないみたいな言い方だね」
「頑張らないと、対処出来ないですよ!
今まで、障がい年金を受けて、一人でのんびり暮らしていて、後はココに通うだけだったんですから!」
岡本は再度、ハハハと笑った。
「成る程。
スポンサーからの支援を受けて、その明細書は取ってある?」
「はい!こんな事もあろうかと、纏めてしまってあります!」
「うん、じゃあ、その金額をまずは足し算しようか。
あと、一部、必要経費として申告出来る出費の領収証も欲しいところだね」
昼姫が、キョトンとして虚を突かれたような様子でこう答える。
「え?必要経費として申告出来るようなものとか、何も無いですよ?」
「そうか……。専用のスマホを一台購入すれば、ソレは領収証があれば、必要経費として申告出来るよ?あと、通話料も。
本格的に『eスポーツプレイヤー』として、特にプロを目指すのであれば、専用のスマホは持っておいた方がいい。
まぁ、既にセミプロだけどねぇ~」
その、『セミプロ』と云う言葉に、昼姫は驚いたらしかった。
「え?――スポンサーが付いて、『eスポーツ』をやっているからですか?」
「うん。その支援金だけで生活出来るようになったら、本物の『プロeスポーツプレイヤー』だよ?」
昼姫には、そのイメージが想像つかなかった。だけど、大会で頻繁に5位以内に入れたら、可能性はあるのだ。
そして、老師・岡本は、昼姫を安心させる言葉を掛ける。
「でも、金額は正確には判らないけど、その程度の収入だと、我々障がい者には、課税されない可能性が十二分に考えられるよ?」
「えっ!そうなんですか?!」
「まぁ、それでも申告は必要だけどね。
ああ、あと、医療費を計算して提出したら、少し戻って来る可能性すらある。
ホラ、申告しない理由が無い。何せ、申告しなかったら、脱税を疑われるからね」
実際はどうであれ、と云う話だ。そして、岡本が如何に老師であると云えど、今の昼姫レベルの美人に対する、大手基礎化粧品会社のスポンサー支援金の金額は、読み誤った。
だが、流石は老師・岡本。脱税を疑われる可能性を指摘した事で、昼姫は今、本気で税金対策の手を打った方が良い事に気付かされる。
「専用スマホって、本当に経費で落ちますか?」
「うん。本気で、他の用途には使わないのであれば、経費で落ちない理由が無い」
そして、岡本は付け足した。
「どうせなら、ゲーム用に特化した機種を買うと良いよ」
「ゲーム用に、特化?」
昼姫は、『eスポーツ』に加わるまで、スマホでゲームにのめり込んだ経験と云うものが無かった。
それが故に、『ゲーム用に特化したスマホ』と云う物の、存在さえ知らなかった。
「世界的に、『eスポーツ』プレイヤーが増えて来たからねぇ……。
必要であれば、供給される。至極当たり前の原理だよ」
そんなにも、『eスポーツ』は世界的にブームなのだろうか?
自分自身でも参加の、参加者1万人の上、2.3倍の選抜が行われた国内大会に参加していながら、昼姫には世界的な『eスポーツ』の流行に、気付かずにいた。
まぁ、アタシは気付いているから、昼姫に教えても良いんだけど、人格間の会話って難しいから、教えないけどね!