第10話 イージスの性能
香霧はニコッと笑った。早速、サイコワイヤーを一本、イージスへと向かって伸ばした。そしてそのサイコワイヤーは、イージスに接触した瞬間、バチッと弾かれて消え去った。
「うわっ、凄い。サイコワイヤーを接触させただけなのに、パワーをごっそり持っていかれた。
楓ちゃんは、パワーを消費していないの?」
「ん~、あんまり」
楓は言われて初めて、自分のパワーを少しとはいえ、消費している事に気が付いた。
流石は、4つのアンチサイの複合体・イージス。
だがそのパワー消費も、まだ微々たるものだった。それには理由があるのだが、今の楓には分からないだろう。
「じゃあ、次は楓ちゃんに当たらない角度から、サイコキネシスで加速させた小石を当ててみるね」
「あ、そうそう。サイコキネシスには名前は無いの?キャットとか、ライオンみたいに」
「それが、段階分けされているらしくて、私にはどんな段階分けされているのか分からないのよね。
お兄ちゃんも、うろ覚えだって言ってた。
えーと……。丁度良い大きさの石が見当たらないなぁ。どうしよう」
「ドラゴンで、僕に当たらない角度で、小さめのエネルギー弾を作って当てたらどう?」
それを聞いた香霧は、手を打ち鳴らして楓を指差した。
「ソレ、ナイスアイディア!
早速、試してみようか。
えーと……角度はこんなものでいいかな?
行っくよー、楓ちゃん」
「オーライ」
香霧がイージスに右手を向け、左手を添えると、小さなエネルギー弾が現れた。
直径にして、約5センチに見える。だがその大きさは、エネルギー弾の放つ強い光に因るところが大きい。実際には、直径1センチくらいのものなのだろう。
「はあっ!」
気合を入れた香霧の声と同時に、そのエネルギー弾が放たれた。
エネルギー弾は一直線にイージスへと向かい、ぶつかり、小さな爆発を起こしてあっさりと消え去ってしまった。
「うーん……成功したには成功したけど、イマイチ満足感が無いなぁ。
やっぱり、正面から最大火力のドラゴンを防いでみたい。
頼めないかなぁ、香霧ぃ」
「駄目!危険すぎる!
でも、大丈夫よ。あのエネルギー弾でも、十分に拳銃以上の威力があるから。
日常生活では困らない程度の防御力は十分にあるよ、そのイージスには。
さて。今日の訓練はこのくらいにしておこうか。
イージスは、全く新しい超能力だと思うから、お兄ちゃんにも教えてあげたいんだけど、良いかなぁ?」
「いいよ。
その代わり、って訳じゃないんだけど、夏休み中にも訓練を続けてくれないかなぁ?
どうせなら、自由自在に使いこなしたい。
昼過ぎから1日1時間でも良いから、お願い出来る?」
「うん。良いよ。
もしかしたら、楓ちゃんの訓練の結果、今回のイージスのように新しい発見があるかも知れないし。
何より、超能力の訓練って、楽しいのよね。
利害の一致という事で、都合のいい時間になったら、電話してくれる?場所はココで良いでしょう?」
かくして、二人は夏休みの間、超能力の訓練を始める事になった。