イリスの実力

第46話 イリスの実力

「考え事でもしていたんですか?」

「――ちょっと、ね」

「……こんな事で、大丈夫だろうか?」

 本気で不安になる連中だ。
 
 確実に頼りになるのは、アイオロス本人とクィーリー。
 
 問題は、それであのルシファーに対抗出来るかどうかと云う点なのだが。
 
「私、本気を出しましょうか?」

 クィーリーがそう言い。

「そうだね。あのレースでかなり稼げた事だし、収入が無くても構わないか」

 そう応じたアイオロスに、イリスがこう言う。

「あなた達、ルシファー相手に手加減して戦おうと思っていたの?馬鹿みたい。

 ねぇ、ゼフィア。こんな連中、本当に頼りになるの?」
 
「アルフェリオン製の刀を持っている。足を引っ張らない程度には役に立つだろう」

「未だ、僕への評価はその程度ですか」

 それが、悔しいと云えば悔しい。
 
「当たり前だ。ルシファーの強さは、ある面、私に匹敵する。

 だが、負けはしないだろう。これだけの面子が揃っているなら」
 
「――トールさんも含めて、ですか?」

「含めなくても十分。

 ――イリスが、私に匹敵する能力の持ち主であることは、言っていなかったか」
 
「――は?――そんなに?」

「見えない、って?

 女だからって、馬鹿にしないでよね」
 
 セリフの内容とは裏腹に、その表情は怒ってはいない。逆に、微笑んですらいる。
 
「女性だから、ってわけじゃないんですよ。僕が頼りにしているクィーリーも女性ですし。

 ただ、師匠は圧倒的なんで、それに匹敵すると言われても、ちょっと信じ難い……」
 
「私を支配しているんだ。その力をも、支配している。

 逆に、放っておけば再び魔力の暴走を起こしかねない私の力は、それが故に封印を施している。
 
 むしろ、イリスの方がよっぽど頼りになるのだよ」
 
「そ、そんなに……」

「やろうと思えば、あの街一つ、簡単に吹き飛ばせるわ」

 裏付けは無かったが、それを保証する証言をする者がいた。クィーリーだ。
 
「アイオロス様。彼女、アルフェリオン以上の魔力を帯びています。そう言えば、参考になるかと」

「信じられない……」

「戦いになれば分かるわ。

 ルシファーも、私の存在は無視出来ない筈よ」
 
『その通り』