第9話 『AI』プレイヤー
表舞台では判らないところで、恐るべき事態は起こっていた。
『人工知能』プレイヤー、5名の存在だ。
暴利を貪り、徹底的に自己に対して都合の良いトレードばかりを行っていた彼らは、時々成立するそれらのトレードだけで勝ち点を稼ぎ、第一次予選を勝ち上がっていた。
だが、それだけでは第二次予選は通過出来そうにないと気付いた。
『人工知能』プレイヤーが主に行っていたトレードは、20倍対2倍程度のトレードだった。
だが、その旨みの少なさに気付いたプレイヤーは、それらのトレードに応じてくれないのだ。
それに気づいた『人工知能』プレイヤーの提案しようとしているトレードは、10倍対7倍トレード。
通常、トレードを行ってそんなにも双方が高い効率でトレード出来るものではない。
だが、この『Trade around the Star』では、惑星によって勝ち点基準が違い過ぎる為、それらのトレードが成立してしまうのだ。
そして、単なる勝ち点倍率だけでなく、食糧や石油は、己の星の生産に利用できるが故に、『消え物』だとしても、高い倍率でのトレードが成立してしまう。
即ち、10倍対7倍トレードで7倍の方を引くと云う選択肢をだ。
勿論、『消え物』では無い鉄を始めとした鉱物に於いてもだ。
逆に言えば、そう云う立ち回りも、『人工知能』プレイヤーは学ばねばならない。
そして、その一見不利なトレードから、己の星の生産に繋げ、収穫物に対しては、高い倍率でのトレードを求める。
そういう2次的な生産物で儲けるのが、最終的に主生産星になる。
人口は、どの惑星に於いても、勝ち点として高い。
だからこそ、人材のトレードを行う者は少ない。
そこに、『人工知能』プレイヤーは目を付けた。
『人材のトレード』。即ち、『奴隷貿易』である。
だが後に、この奴隷が大きな問題となり、『奴隷解放宣言』を行う星が続出する。
そして、生産物や貿易物の『加工貿易』の為に、機械化が行われ、『産業革命』が起きる。
この、『産業革命』を起こす事に於いては、『人工知能』プレイヤーに一日の長があった。
何故ならば、『人工知能』は一種の『機械』であり、産業革命を起こす『条件』を満たす迄のノウハウを持っているからだ。
こうして、『人工知能』は少しずつ学んでゆく。いつか起こる、『シンギュラリティ』を引き起こす迄。
或いは、この『Trade around the Star』も、『シンギュラリティ』を引き起こす為の材料なのかも知れなかった。
兎も角、昼姫や『Fujiko』が予選を勝ち上がるには、これらの『人工知能』プレイヤーと渡り合わなければならないのだから、相当に大変であることは確かだった。