第14話 『祝福の言葉』
「老師。リベンジの時間です。
――試合って来ます!」
昼姫が岡本にそう宣言する。
「儂の引きも、悪くは無い惑星なんだけどねぇ……。
『食糧型惑星』だ。特に、米に特化した。
儂も負けんぞ?」
畳敷きの部屋で、コンセントに延長ケーブルを、更に充電コードを繋いでスマホは充電維持状態で試合は始まる。
リモートでの参加だが、関東勢等は、東京ドームでの大会会場に集っての参加である。
3位以内に入れば、リモートでの参加でも、表彰状の読み上げが行われる。その場面をスマホで見る事は可能だ。
昼姫は、この大会で5位以内を目指していた。5位以内に入れるのならば、スポンサーから追加報酬が来る。大事な場面だ。――昼姫は気付いていないが。
その大会で、『輸送船型惑星』引いたのは、何の因果であろう?
兎も角、プレイング経験知が少ない代わりに、有利な惑星ではある。
そこで、昼姫が取った作戦が、『薄利多売』。即ち、常連さんが出来たら、速やかに3%引きをして、7%の手数料で輸送を請け負うと云う戦略だ。
序盤から常連さん――お得意様が出来るように、1%引きの9%での手数料でのオートトレードも、積極的に行う。
但し、手数料には条件を付けた。即ち、食糧、水、鉄、石油等、人口の増加と輸送船の大量作成が狙いだ。それに依って『数の暴力』に依るトレードを行うと云う戦略だった。
コレは、他の『輸送船型惑星』からは、反感を買う戦略であった。
ソレが故に、他の『輸送船型惑星』は禁断のトレード仲介を目論んだ。4%引きの6%の手数料でのトレード仲介だ。
オートトレードにも、2%引きの8%の手数料でのオートトレード設定を企んだ。
最序盤は、警戒されていなかったから、『Morning』が有利だった。
中盤。他の『輸送船型惑星』担当プレイヤーが、勢いをつけて勝利点で『Morning』に切迫した。
だが、終盤、『Morning』が持ち返した。と云うか、他の『輸送船型惑星』担当プレイヤーが苦境に立たされた。
手数料取得率が低すぎるが故の、資源の不足。人口に関して言えば、減っていく者も居た。
そもそも、『輸送船型惑星』は、全プレイヤー間で必要十分条件を、完璧に果たしている訳では無い。
だから、手数料の問題では無く、そもそもの輸送手段の枯渇から、『Morning』の輸送船に頼らざるを得ない状況が発生したのだ。
そして、『Morning』での資源は、そもそもが多くの先人が『ベストバランス』と研究の成果として見出した絶妙のパーセンテージで得た手数料である。
ソレの為の資源が、カツカツと云うレベルまでは追い込まれるが、足りない、と云う事態にはならない。
トレードそのものは、当然のように成り立っていたのだから、当たり前である。
むしろ、トレードの手数料で足元を見ずに引き受けていた『Morning』は、高評価だった位である。
何故ならば、オートトレードの設定をしていたが故に、自動的だけれど優先度低めで、それでも、『輸送船』の不足にも過剰にもならないバランスでトレードが成り立っていたのだ。
結果、『Morning』こと昼姫は5位。『TAO』こと岡本は3位に入選した。
「健闘したね」
岡本からの慰めの言葉も、今は要らない。
否、むしろ岡本よりも低位の順位よりも、1万人中ベスト5に入った喜びの気持ちの方が強かったのだ。昼姫はそれを『祝福の言葉』として受け止めた。
「はい、ありがとうございます♪♪」
儲けは無かった?否、そんな筈は無い。基礎化粧品会社のスポンサーを得て、ベスト10までは顔が公開されて、今の昼姫は超絶美人なのだから。
必ずや、追加報酬を得られる。岡本にはその事が判っていた。
だが、昼姫はその事にも頭を回す余裕がないくらい、高順位に興奮していたのだから。
「やれやれ、成績は立派だが、未だ半人前か。
儂が指導せねばならぬな」
老師・岡本はそんな決意の言葉を吐くのだった。